ファイナンス 2025年7月号 No.716
49/108

SPOT グローバル・ミニマム課税の法制化について*5) 総収入金額が 7.5 億ユーロ以上か否かの判定は、原則として、その対象会計年度の直前の 4 対象会計年度のうち 2 以上の対象会計年度においてグループ*6) IIR において課税を受けるのは、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等である内国法人のみであるが(法法 6 の 2)、UTPR や QDMTT においては、こうした内国法人のほか、特定多国籍企業グループ等に属する我が国を所在地国とする恒久的施設等を有する構成会社等である外国法人も対象となる(法法 6 の 3、6 の 4、8 の 2、8 の 3)。さらに、QDMTT においては、連結等財務諸表に連結して記載されず会計上の持分法の適用を受けるにすぎない共同支配会社等(法法 82 十五)も対象となる(法法 6 の 4、8 の 3)。*7) 特定多国籍企業グループ等に係る共同支配会社等(法法 82 十五)についても、その所在地国における実効税率の計算等を行うが、共同支配会社等については同じ所在地国内の構成会社等とは区別して資本系統ごとに実効税率を計算するなど(法法 82 の 3 ④参照)、構成会社等とは異なる規定が適用される場面がある。本稿では紙幅との関係を踏まえて構成会社等の場合に限って記載している。*8) このほか、所在地国の実効税率が最低税率以上である場合や、所在地国全体として所得が生じていないような場合などであっても、例えば、ある対象会計年度において、過去の対象会計年度の実効税率の計算で考慮されていた税額が減少し、その結果、過去の対象会計年度における実効税率が15%を下回ることとなったときには、その当該対象会計年度において別途の税額が発生する場合がある(法法 82 の 3 ②一ロ・ハ、二、三参照)。この点は基本的に QDMTT においても同様である。の総収入金額が 7.5 億ユーロ以上か否かによって行う(法法 82 四)。て、所在地国あたりの実効税率を計算することになる。コモン・アプローチの下、我が国のグローバル・ミニマム課税も、モデル・ルール等の規定に則った内容となっている。我が国では、法人税法において関連する規定を措置しており、令和5 年度税制改正においてIIR(「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」)を、また令和 7 年度税制改正においてUTPR(「各対象会計年度の国際最低課税残余額に対する法人税」)及び QDMTT(「各対象会計年度の国内最低課税額に対する法人税」)をそれぞれ導入している。この令和 7 年度税制改正により、我が国におけるグローバル・ミニマム課税を構成する一連のルールの導入は完了したこととなる。法人税法の総則に納税義務者(法法 4 ①・③)や課税所得等の範囲(法法 6 の 2~6 の 4、8 の 2、8 の 3)、対象会計年度の意義(法法 15 の 2)といった基本的な規定を定めた上で、内国法人については第 2 編第 2章に、また外国法人については第 3 編第 3 章において税額の計算等に関する規定を定めている。また、第 4 編において、グループの全体像やグローバル・ミニマム課税に関する計算の明細等を税務当局に対して提供する仕組みとして情報申告制度(特定多国籍企業グループ等に係る報告事項等の提供制度)(法法 150 の 3)が措置されている。グローバル・ミニマム課税の対象となるのは「特定多国籍企業グループ等」である。この特定多国籍企業グループ等には、典型的には、グループの総収入金額が 7.5 億ユーロ以上*5 であって複数の国・地域にグループに属する会社等を持つ財務会計上の連結企業グループが該当する(法法 82 四)。そして、グループ内の最終親会社等(法法 82 十)の連結等財務諸表(法法 82 一)に連結して記載されることなどによってグループに属する会社等やその恒久的施設等は「構成会社等」と呼ばれる(法法 82 二イ、十三)。納税義務を負担するのは特定多国籍企業グループ等内の個々の法人である*6(法法 4 ①・③)。特定多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表の作成に係る期間を「対象会計年度」といい(法法 15 の2)、IIR/UTPR/QDMTT に係る税額は、いずれもこの期間について生じることとなる(法法 6 の 2~6 の 4、8 の 2、8 の 3)。ある対象会計年度の特定多国籍企業グループ等について、その進出先の国・地域における実効税率が最低税率15%を下回るか否かが問題となる典型的なケースにおける税額計算の流れは大要以下のとおりである*7*8。【IIR(「各対象会計年度の国際最低課税額に対する法人税」)における税額計算】① 特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等単位の所得金額及び税額の計算② 構成会社等の所在地国ごとの実効税率(「国別実効税率」)の計算③ 特定多国籍企業グループ等単位の国際最低課税額(「グループ国際最低課税額」)の計算④ 各所在地国における各構成会社等単位の国際最低課税額(「会社等別国際最低課税額」)の計算⑤ 納税義務者となる法人の負担すべき国際最低課税額の計算ファイナンス 2025 Jul. 45(3)対象会計年度(4)基本的な税額計算の流れ(1)総論(2)制度の対象となる多国籍企業グループ3  我が国におけるグローバル・ミニマム課税

元のページ  ../index.html#49

このブックを見る