SPOT *3) モデル・ルール及びコンメンタリについては、以下の OECD のウェブサイトにおいて公表されている。モデル・ルール及びコンメンタリの合意後も、IF において制度の詳細な内容を定める執行ガイダンス(Administrative Guidance)が累次にわたって検討・公表されており、国際的に合意された執行ガイダンスは順次、コンメンタリに統合されることが予定されている。(参考)https://www.oecd.org/en/topics/sub-issues/global-minimum-tax/global-anti-base-erosion-model-rules-pillar-two.html*4) 後述のとおり、国内法においてはこれらと異なる名称がそれぞれ用いられているが、説明の便宜上、本稿では、特に個別の国内法上の規定に関連して図表 1 2 本の柱についてグローバル・ミニマム課税の法制化について言及すべき場合を除いて、IIR/UTPR/QDMTT の各略称を用いる。籍企業グループが世界中のどこで活動する場合でも国際的に合意された最低税率15%以上の税負担を確保することを通じて、各国による法人税引下げ競争を防止し、公平な競争環境を実現することを目的としている。グローバル・ミニマム課税については、「第1の柱」におけるのと異なり、多数国間条約ではなく、各国が国内法により導入することが前提とされている。各国はグローバル・ミニマム課税の導入を強制されることはないが、導入する場合には、IFにおいて合意されたモデル・ルール(Global Anti-Base Erosion Model Rules(Pillar Two))及びコンメンタリ(Commentary to the GloBE Rules)(以下、両者を合わせて「モデル・ルール等」という。)に沿った仕組みとすることが求められる(こうした枠組みは「コモン・アプローチ」と呼ばれる。)*3。そして、各国で導入された制度の内容やその執行の状況については、今後、IFにおける審査(ピア・レビュー)を通じて、モデル・ルール等に沿った内容となっていることを確認されることが予定されている。⚫ 市場国に物理的拠点(PE:Permanent Establishment)を置かずにビジネスを行う企業の増加➢ 現在の国際課税原則「PEなくして課税なし」の下で、市場国で課税が行えない問題が顕在化。⚫ 低い法人税率や優遇税制によって外国企業を誘致する動き➢ 法人税の継続的な引下げにより各国の法人税収基盤が弱体化。➢ 税制面において企業間の公平な競争条件を阻害。経緯⚫ OECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」(現在は147か国・地域が参加)において議論が進められ、2021年10月、2本の柱の解決策(※)に合意。(※)「第1の柱」(市場国への新たな課税権の配分)及び「第2の柱」(グ ロ ー バ ル ・ ミ ニ マ ム 課 税 ) に よ り 構 成 。⚫ 2021年12月、グローバル・ミニマム課税のモデルルールを公表。その後、コメンタリー、ガイダンスを順次公表。国内法での対応が求められており、各国において法制化が進行中。※日本においては、2023年に所得合算ルール(IIR)を法制化。2025年に軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)についても法制化。⚫ 2023年7月、交渉成果をアウトカム・ステートメントとして公表(142か国・地域が合意)。⚫ 2023年10月、「第1の柱」の多数国間条約の案文を公表。早期署名開放を目指し、移転価格税制の適用に係る簡素化・合理化(利益B)とパッケージで交渉。グローバル・ミニマム課税は、①所得合算ルール(Income Inclusion Rule)(以下「IIR」という。)、②軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule)(以下「UTPR」という。)及び③国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax)(以下「QDMTT」という。)の 3 つのルールにより構成されている*4。IIR は、多国籍企業グループ内の子会社等について、その所在する国・地域(所在地国)における実効税率が 15%に満たない場合に、その満たない部分の金額について、同じグループ内の親会社等に対して課税する仕組みである。これに対して、UTPR は、例えば親会社等の所在地国における実効税率が 15%に満たない場合に、その満たない部分の金額を子会社等に対して課税する仕組みである。仮に、グローバル・ミニマム課税が IIR のみで構成ファイナンス 2025 Jul. 43国際課税に関するOECD/G20「「BEPS 包摂的枠組み」 2本の柱について(1)IIR 及び UTPR2 グローバル・ミニマム課税の概要
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