監督局総合政策局企画市場局監督局検査局総務企画局SPOT 金融庁金融庁(注)証券取引等監視委員会や公認会計士・監査審査会等を除いています。(出所)筆者作成新発田龍史 審議官に聞く、金融庁の過去と現在図表 2 金融庁再編のイメージ*1) 下記を参照。https://www.fsa.go.jp/teach/kurashi.pdf服部:金融庁初期は特に監督と検査の機能が大切だったということだと思いますが、そもそも監督と検査というもの自体が、初学者にとって理解しにくい点だと思います。金融庁の一般向けの説明を参照すると、監督とは「金融機関から定期的に報告をうけたりしながら、各金融機関の仕事ぶりについて絶えずチェックすること」と説明する一方、検査については「金融機関がちゃんとしているか、法律・ルールを守って仕事をしているかなど、金融庁の検査官が各金融機関に直接出かけて調査を行うこと」と説明しています*1。新発田:監督というのは銀行など金融機関に対する許認可を行うにあたり必要な要件を充足しているかチェックをしたり、不祥事やシステム障害が発生した時に報告を受けてその後の対応をフォローアップしたり、さらに必要な場合には業務の改善を求める行政処分を行う機能のことです。銀行に関する規制が厳しいことはみなさんご存知かもしれませんが、銀行は他の事業と異なり、経営の健全性を確保する観点から、銀行業以外の業務は何をやってもよいということではなく、銀行ができる業務は、法令で認められたものに制限されています。このため、新しい商品やサービスを始めたい銀行は、法令上問題がないか当局の担当者に確認することも少なくありません。一方、以前存在していた検査局は金融機関の財務や業務の実態を正確に把握するために、立入検査をする機能を持っていました。金融監督庁初代検査部長の五味さんは、検査の仕事とはレントゲン技師だ、どんな診断になるかは考えずに、とにかく正確なレントゲン写真を撮ってこい、という指示を検査官に出しています。金融庁、そしてその前身の金融監督庁が発足した2000 年前後、日本の金融の最大の課題は不良債権問題への対応でした。バブルが崩壊し、資産価格が下落する中で、不良債権となってしまった貸出が金融機関のバランスシートに潜んでいるという前提で、たとえて言えば、検査の仕事はまずは正確なレントゲン写真を撮って実態を把握することであり、それをベースに医者としての監督局が治療方針等対応を考えるという役割分担です。その後、不良債権問題が落ち着いてくると、不良債権問題への対応に大きな役割を果たしてきた検査の副作用が出てきます。「重箱の隅をつつくような検査ばかりして本質的な指摘ができていない」といった批判も受けました。そこで、検査局を廃止して、総合政策局を新設しました。もちろん、金融庁には検査を行う人はいますが、かつてのように年に 4 回立入検査にだけ行っていればよいということはなく、総合政策局では市場リスク、システムリスクといったリスクカテゴリー別に、いわば横串を差すようなかたちで専門的な分析等を行うほか、フィンテックやサイバーセキュリティ、経済安全保障などに関する政策立案も併せて担当しています。監督局がそれぞれの金融機関の「かかりつけ医」のような存在として、経営トップを相手に全体的な健康管理を担当する一方で、総合政策局は、「専門医」の立場で、高度な専門性を要する個別のリスクについて深掘りする。この両者を組み合わせることで、部分最適に陥ることなく、全体としてのバランスを確保するアプローチを採用しているともいえます。ファイナンス 2025 Jul. 33監督と検査とは
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