SPOT *32) 同 FS の実施に対して、日本は米国等のパートナーと連携して資金支援をしている。*33) International Monetary Fund “Remittances to Samoa: A Safe Payment Corridor” 15 May 2025https://www.imf.org/en/Publications/selected-issues-papers/Issues/2025/05/14/Remittances-to-Samoa-A-Safe-Payment-Corridor-566996太平洋島嶼国からのコルレス銀行の撤退についてIMF と世界銀行が主体となり、マネロン対応に関する金融機関のリスクベースアプローチを推進する観点から、低リスクの送金ルートを特定する取組である。CBR ロードマップにおいては、太平洋島嶼国に対して、評価フレームワークを策定、パイロットとして実践し、その結果を周知することが勧告 2 として盛り込まれている。上記のように、トンガやサモアといった太平洋島嶼国は、海外への出稼ぎ労働者からの仕送りといった小口のクロスボーダー送金が多い傾向にある。そのような小口送金は、大口のホールセール送金に比べて相対的に低リスクと見込まれる。他方、足下の太平洋島嶼国におけるコルレス銀行実務においては、実際のリスクに関わらず一律にリスク回避がなされる傾向にある。そのため、IMF が送金ルートの評価を行い、低リスクのルートを特定・公表することで、金融機関のコンプライアンス対応負担を緩和し、過度なリスク回避を解消することがその目的となる。併せて、太平洋島嶼国および送金元国の当局に対して、(低リスクの小口送金を扱う金融機関に関する)規制および監督指針の 明 確 化 や 緩 和、 各 国 間 の 規 制・ 監 督 の 調 和(harmonization)といった具体的措置が取られるよう働きかける方針となっている。日本は、令和 6 年度補正予算を通じて、IMF によるリスク評価の実施を支援している。2025 年 5 月に、サモアを対象とした評価結果が公表され、サモアの主要な送金ルートについて、マネロン等のリスクは限定的であると結論づけられている。今後、他の太平洋島嶼国に対しても、同様の取組が展開されていく見込みである。*33マネーロンダリング・テロ資金供与・拡散金融(マネロン等)対策の国際基準(FATF 基準)を策定し、各国の取組を監視する多国間の枠組みとして、FATF が存在している。FATF には、OECD 加盟国を中心に、38か国・地域と2 地域機関が加盟しているが、FATF 基準支援を行うというものである。フェーズ 2 は、中長期的な解決策として、クロスボ ー ダ ー 送 金 に 関 す る 集 中 決 済 機 関(Payment Aggregation Mechanism)を構築する取組である。上記のとおり、太平洋島嶼国からコルレス銀行が撤退する要因の一つは、取引規模が小さく規模の経済が働かない一方で、コンプライアンス対応等の負担やリスクイベント発生時のペナルティ・コストが高く、事業として採算が見込めない事業構造である。規模の経済を働かせる観点からは、各国の現地金融機関と個別にコルレス契約を結ぶよりも、複数の国の送金を束ねた方が取引規模を稼ぐことができ、効率的となる。そのような観点から、規模の経済を働かせて独立採算が可能となる仕組みの構築を目指すこととしている。他方、実際の構築に当たっては、ビジネスモデル、法的な位置づけ、ガバナンス構造等を精査していく必要があるため、まずは、フェーズ 1 と並行して、実施可能性調査(feasibility study)を行うこととなっている。*32なお、世銀プロジェクトの原資は、同行の譲許的資金である IDA を活用している。IDA は、低所得国向けの開発支援を目的としており、高所得国であるパラオ、クック諸島、ニウエ、ナウルの 4 か国は IDA の対象に含まれない。他方、それらの国においても、コルレス銀行の撤退の問題は深刻であるため、世界銀行は、それらの国をプロジェクト対象に含めるために必要な資金を他のドナーから調達しようと模索していた。その状況を踏まえて、日本は、非 IDA 対象 4 か国をプロジェクト対象に含めるために必要な資金として、令和 6 年度補正予算において 280 万米ドルを措置しており、今後、それらの国も支援対象となる見込みである。「送金回廊リスク評価(Remittance Corridor Risk Assessment)」は、2020 年に金融安定理事会(FSB:Financial Stability Board)が策定した「クロスボーダー送金の改善に向けた G20 ロードマップ」を受け、ファイナンス 2025 Jul. 27〈アジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)共同議長国としての取組〉〈IMF の太平洋島嶼国向け「送金回廊リスク評価」のパイロット実施〉
元のページ ../index.html#31