SPOT https://www.fsb.org/work-of-the-fsb/financial-innovation-and-structural-change/cross-border-payments/g20-targets-for-enhancing-cross-border-payments-2/https://www.bis.org/cpmi/publ/d147.pdfhttps://forumsec.org/sites/default/files/2024-05/CBR%20Report_FINAL.pdf*20) Remittance Prices Worldwide https://remittanceprices.worldbank.org/*21) G20 クロスボーダー送金強化プロジェクトにおいても、この目標が再確認されている。*22) 非公式な仲介人ネットワークを使い現地で相手に現金を渡す手段。*23) Bank for International Settlement, “Correspondent banking”, 2016*24) Pacific Islands Forum “The Decline of Correspondent Banking in Pacific Island Countries” July 20237.28%、バヌアツが 11.37% となっている。*20 これは、Settlement)によれば、近年、銀行は、コンプライア(CDD:customer due diligence)をどこまで行わなして、豪州から太平洋島嶼国への送金にかかるコストは、フィジーが 4.78%、トンガが 7.19%、サモアが国連の SDGs の目標 10「人や国の不平等をなくそう」で定められた、2030 年までに移住労働者による送金コストを 3% 未満に引き下げるという目標に比べて相当に高い水準である。*21 コルレス銀行関係が失われると、競争原理が働かなくなり、このコストが更に上がることが懸念される。コルレス銀行関係が失われると、送金者が代替手段として非公式な送金手段に流れることも懸念される。例えば、ハワラ(hawala)型送金*22 や暗号資産等を用いた送金が増加すると、規制・監督当局が資金の流れを補足しづらくなり、マネロン等のリスクの増加につながる。なぜ、太平洋島嶼国においてコルレス銀行の撤退がグローバルに比べて深刻に進んでいるのだろうか。国 際 決 済 銀 行(BIS:Bank for International ンス関連コストの上昇や顧客デュー・ディリジェンスければならないか不透明であるといった点を主な理由として、コルレス銀行関係を縮小しているという。加えて、リスクイベントが生じた際の当局からのペナルティとレピュテーションリスクの大きさも勘案して、コルレスサービスの提供に対して慎重になっている。その結果、(1)コンプライアンス関係費用を賄えるほどの規模が見込めない銀行、(2)リスクが高すぎると受け止められる法域に所在する銀行、(3)適切にリスク評価を行う際に必要な情報が欠けている顧客と取引のある銀行、(4)マネロンリスクの高い商品・サービス提供をしているもしくは顧客がいるような銀行に対するコルレスサービスの提供の停止につながっているという。*23世界銀行等によれば、太平洋島嶼国におけるコルレス銀行撤退の要因は、BIS の上記の指摘とも整合的であるようである。*24まず、太平洋島嶼国の「狭小性」等の地理的特性により送金の取引規模が小さくなり、規模の経済が働かないことが要因の一つとされている。コルレス銀行には、契約時及びそれ以降、CDD 等のコンプライアンス対応が求められる他、相当のシステム投資が必要となる。また、多くの太平洋島嶼国は、電子本人確認(e-KYC:electronic Know Your Customer)や国民ID システムといったインフラが整備されていないため、コンプライアンス対応を手動で行うこととなり、負担は更に増加する。これは、取引ごとに発生する変動費用と異なり、固定費用となるため、規模の経済が働くある程度の取引規模が見込まれないと平均費用の上昇につながり、収益率の悪化につながる。また、太平洋島嶼国の政府及び現地金融機関のマネロン対応等の態勢・キャパシティの不足も要因の一つである。太平洋島嶼国は元々人口が限られていることに加えて、外国への人口・頭脳流出が社会課題であることは既に述べた。一般的に、金融規制・監督分野に限らず様々な分野で人手不足が深刻であり、自ずと、他地域に比べて、現地政府のマネロン対応に関する法規制や監督態勢、現地金融機関のマネロン対応の態勢整備が不十分となる。また、太平洋島嶼国の中には、過去にオフショア金融センターとして租税の不透明性を指摘された国や、自国の市民権を海外に販売している国等もあり、マネロンに関するリスクが指摘されている。国際的な金融機関の立場からすると、コルレス契約を結んで、仮に契約先でリスクイベントがあった場合に、自国の規制当局から摘発され莫大なペナルティ・コストを課されるリスクとレピュテーションリスクを負うこととなる。一点目で指摘したように、太平洋島嶼国のビジネスはそもそも規模の経済が働かず収益性が低いところ、ビジネス上の判断として、他地域とも比較しながら、あえて太平洋島嶼国のコルレス 24 ファイナンス 2025 Jul.〈コルレス銀行の撤退の要因〉
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