SPOT(写真2)JADE 年次総会世銀特別セッションの模様(提供:世界銀行)第 7 回開発経済学会大会では、農業、社会規範・文化、ギー移行の加速化の必要性など、以前と比べてはるかに大きな課題に直面していること。・ (インドを例に挙げ、)(ア)非生産的な企業の市場への居座りなど資本活用の非効率性、(イ)特に女性人材の登用の遅れなど人的資本割当の非効率性、(ウ)経済活動のエネルギー依存度の高さなどエネルギー使用の非効率性、など、これまでの教訓や足元の状況を踏まえ、高所得国への移行には新たなアプローチが必要とされること。・ 具体的には、まず投資に焦点を当て、次に海外からの新技術の導入に重点を置く。そして最後に、投資、新技術導入、イノベーションのバランスをとる三本柱の戦略を採る必要があること。など、サムスンをはじめとする韓国企業が、当初日本企業から技術を学びテレビなど家電の製造を始め、韓国政府による新技術の研究開発支援の後押しを受け、独自に技術を開発出来る企業へと成長し、スマートフォンなどで世界の主要企業に成長した例などを挙げつつ説明しました。特別セッションは、Gill チーフエコノミストの基調講演に続き、園部教授、澤田教授、東京大学の鈴木綾教授、一橋大学の森悠子准教授が討論者となり議論が行われ、学生からの質問に答えるという形で進められました。学生からは、出身国が高所得国への移行を図る上での重視すべき政策、途上国が目標とすべき国としてなぜいつも米国が挙げられるのか、など、様々な質問が寄せられ、最後は次のセッションとの関係で時間切れになってしまうほどでした。世銀 DEC の面々も、JADE の先生方も今回の共同イベントの成功を、今後の協力の深化に繋げていきたいと語っていたのが印象的でありました。世銀 DEC とは、本年中に更なるイベントの開催を計画中であり、これらのイベントでは、JADE に加え、ADB や ADBI とも連携し、より広範なコラボレーションを追求したいと考えています。ナレッジ分野で MDBs と連携を深めることは、日本の学術・研究機関にとっても具体的なメリットが期待されます。具体的には、(ア)日本の研究者が研究を行う際、実践的な政策インプリケーションというフDEC チームの参加。などを支援するとともに、今後の世銀 DEC と JADEとの連携強化のため、コーディネーターを 1 名東京に常駐させることに合意しました。以下、JADE と世銀 DEC との連携強化に向け、初の試みとして開催された、JADE 年次総会での世銀特別セッションについて、その様子を少しご紹介したいと思います。本年 4 月 5 - 6 日に茨城県つくば市で開催された、保健、紛争、ジェンダー、企業など様々なテーマについての議論、同学会の二大学術賞である不破賞のセレモニー、学生による発表などが行われました。世銀特別セッションは大会初日の4月5日に「中所得国の罠」をテーマに開催され、学会長である園部教授、財務省から国際局開発機関課の津田課長からの挨拶ののち、世銀からIndermit Gill チーフエコノミスト兼上級副総裁が登壇し、同氏が 2009 年に提示した概念である「中所得国の罠」について基調講演を行いました。筆者も同セッションに参加しましたが、予想を遥かに上回る数の学生が参加し会場は立ち見も出るほどで、非常に熱気にあふれたセッションとなったのが印象的でした。基調講演で Gill チーフエコノミストは、・ 中所得国から高所得国へのブレイクスルーを実現した国は(韓国やポーランド、チリなど)一握りであること。・ 中所得国の罠から抜け出すためには、急速な高齢化や先進国における保護主義の台頭、エネル〈JADE 年次総会での世銀特別セッション〉 16 ファイナンス 2025 Jul.5.今後に向けて
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