SPOT 世界銀行と日本開発経済学会との連携強化に向けた取組*10) 日本開発経済学会(JADE)についての詳細は、同学会ウェブサイト(https://www.jade.gr.jp/index.html)をご参照ください。政府をはじめとする開発機関の運営能力の向上にも寄与しています。ADBI はまた、G7 や G20 のシンクタンクともいえる Think 7(T7)、Think 20(T20)を通じ、各国の研究機関やシンクタンクとのネットワークの強化に取り組んでいます。また、学術機関や研究機関の役割の一つに人材育成が挙げられます。日本政府は、世銀や ADB に設けた奨学金プログラムを通じ、途上国の有為な学生が特に日本の大学院で開発やマクロ経済についての知識を習得し、母国で行政官や研究者として自国の開発に携わることを支援しています。これら奨学金プログラムのもう一つの大きな役割として、日本の大学と MDBs との連携強化が挙げられ、例えば、2024 年夏には、初の試みとして、ADB 奨学金プログラムのパートナー大学である国連大学(United Nations University)との間で「持続可能な開発のためのナレッジ」をテーマにした学術シンポジウムを開催しました。同シンポジウムでは、日本の研究者や ADBI や ADB の幹部・職員、奨学生の間で活発な意見交換が行われるなど、人材育成も絡めた MDBs と日本の研究・教育機関との連携強化を進めています。日 本 の 学 術・ 研 究 機 関 と、 世 銀 を は じ め と す るMDBs のナレッジ部門との連携強化を図る際に重要な視点は、片方向のナレッジ「支援」ではなく、双方向の「協力や連携」として推進すべき、という観点です。一義的には、MDBs の専門的知見やネットワークをレバレッジとして活用することで、日本のナレッジや 技 術 が、 途 上 国 が 直 面 す る 課 題 解 決 の た め のソリューションの形で役立てられることを目指す訳ですが、こうした取組を通じ、日本企業や日本の学術・研究機関の MDBsプロジェクトへの参画や、人材育成などを図る、という視点は常に念頭に置く必要があります。こ う し た 問 題 意 識 を 踏 ま え、 世 銀 開 発 経 済 総 局(Development Economics Vice Presidency:DEC)と 日 本 開 発 経 済 学 会(Japanese Association for Development Economics:JADE)との連携強化に向けた取組をご紹介したいと思います。JADE は、一流英文ジャーナルに多くの論文を発表することで、日本における開発経済学研究の更なる発展、そしてその研究成果を現場に応用することを通じた途上国の貧困削減や発展への貢献に寄与すべく、2001 年より日本の主要な開発経済学のコンファレンスとして開催されてきた Hayami Conference(2013年に Hakone Conference から改称)を発展的に改組し設立された新進気鋭の学会で、学会長で本年 4 月まで ADBI 所長を務められた政策研究大学院大学の園部哲史教授、副学会長で前 ADB チーフエコノミストを務 めら れた 東京大 学の 澤田 康幸 教授 をはじ め、MDBs や国際通貨基金(IMF)で豊富な経験をお持ちの教授が多数在籍しておられます*10。JADE は、その設立の目的に、(ア)日本の開発経済学者の研究の海外へ発信するとともに海外の新しい研究成果を取り込む知的ネットワークのハブとなること、(イ)研究の成果を途上国の開発の現場での実践への活用、国際社会への還元、(ウ)若手研究者の育成、を掲げており、こうした研究の実践への応用、日本・海外双方向への裨益、人材育成などは、日本政府がナレッジ分野について MDBs との協力に期待する方向性と一致するものです。そこで今回、世銀と JADE の連携強化のため、当省から双方に働きかけ、先ほど紹介した日本政府と世銀とのナレッジ分野での協力の一つである、KCP への支援の一環として、世銀が自身の研究の成果を日本で発表するセミナー開催を日本政府が支援し、JADE との連携強化の機会として活用することにしました。具体的には、世銀でナレッジ分野を総括する DECとの連携強化に向けた第一弾のイベントとして、本年4 月上旬に、・ 世銀のレポート「Rethinking resilience」のお披露目イベントを東京で、世銀と JICA 緒方研究所との共催で開催。・ JADE 年次総会への世銀チーフエコノミスト以下ファイナンス 2025 Jul. 15〈問題意識・狙い〉〈日本開発経済学会(JADE)〉4. 世界銀行と日本開発経済学会との連携強化
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