ファイナンス 2025年7月号 No.716
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SPOThttps://www.worldbank.org/en/research/publication/commodity-marketsPublications. Available at https://www.worldbank.org/en/research/publication/long-term-growth-prospects*3) 例えば慶應義塾大学の能勢学准教授は JADE Letter No. 10 において開発経済学者の学術機関でのキャリアと政策機関でのキャリアについて寄稿され*4) 詳細は https://www.worldbank.org/en/about/unit/brief/knowledge-bank など参照。*5) https://www.worldbank.org/ja/news/feature/2012/10/02/gfdrr-knowledge-notes*6) Baffes, J., & Nagle, P.(2022). Commodity markets:evolution, challenges, and policies. World Bank Publications. available at *7) Kose, M. A., & Ohnsorge, F.(2024). Falling long-term growth prospects:trends, expectations, and policies. World Bank *8) https://www.worldbank.org/ja/country/japan/publication/world-development-report*9) https://www.worldbank.org/ja/publication/global-economic-prospectsています。詳細は https://www.jade.gr.jp/activities.html から第 10 号をご覧ください。施、検証や、政府機関との対話に資するものであることに重きが置かれる傾向を有します*3。例えば、世銀は自らを Knowledge Bank とブランディングしており、(ア)研究や分析を、融資や技術支援など、開発の現場での業務に落とし込むことが出来ること、(イ)革新的な学説や方法論を取り入れることで、開発効果をスケールアップ出来ること、(ウ)グローバルな学説の潮流を形成することが出来ること、をその研究・分析活動の大きな特徴としています*4。こうした MDBs の研究・分析活動は、MDBs に蓄積される、開発に関する豊富な経験や知見によって支えられています。これらは、様々な開発支援プロジェクトからの教訓や実地の検証や、MDBs が持つ、先進国・途上国政府、例えば日本の JICA など各国の開発機関、他の MDBs や国連機関など国際機関、NGO や慈善団体など市民社会団体などとの幅広いネットワークなどによりもたらされるものです。こうした特徴を有する MDBs のナレッジ業務は、防災、国際保健、質の高いインフラ、途上国の債務問題、など、開発分野における日本の重点政策をグローバルに推進する上で不可欠な業務であり、日本にとっ例えば、日本の開発分野の優先分野の一丁目一番地とも言える防災など強靭性の強化は、日本の学術的・専門的な知見や経験を、世銀が持つ、ネットワーク力やアジェンダ設定能力を活用し、グローバルな開発支援の政策・現場に主流化させてきた分野です。例えば、2011 年の東日本大震災の後、世銀は日本の様々な研究者や官民の専門家と協力して「大規模災害から学ぶ:東日本大震災からの教訓」*5 というレポートをまとめ、2014 年に英語と日本語で出版しました。同レポートは、世銀の業務やレポートの中で度々参照されるなど高い評価を得、世銀のあらゆるプロジェクトに防災の観点を取り入れる「防災の主流化」、そして「世界銀行東京防災ハブ」を通じた途上国への知見の共有や、途上国政府職員の能力強化など、発展的に実践されています。こうした実践色の濃いプロジェクトの他にも、例えば、世銀との間では、政策との関連性が高く、大きな開発インパクトが期待される研究活動を公募し、選抜さ れ た 研 究 を 支 援 す る 多 国 間 の 枠 組 み で あ るKnowledge for Change Program(KCP)を通じ、特に債務問題、人的資本、テクノロジー、ガバナンスなどの分野の研究を支援しています。また、・ 資源価格、食料価格など一次産品価格の変動の要因や、また価格変動が途上国のマクロ経済政策に与える影響を分析した報告書「一次産品市場:その変化と課題、求められる政策」*6、・ 世界的に低下傾向にある潜在成長率について分析し、その引き上げのための政策提言をとりまとめた報告書「悪化する長期成長見通し:傾向、予想、政策」*7、など、日本政府と世銀との間で特定のテーマを決めた上で、その研究活動を支援するプロジェクトもあり、様々なアプローチで連携を強化しています。こうした研究の成果は、世銀のフラッグシップ・レポートである「世界開発報告書」*8 や「世界経済見通し」*9、その他様々な報告書、文献などにおいて発表され、世界の多くの政府関係者、学術関係者に参照されるとともに、実務担当者、官民の開発関係者、一般市民を対象に、研究の成果や政策への含意について説明会を開催するなど、知見の共有や広報にも力を入れています。ADB とは、日本政府の支援を受け ADB が 1997 年に 東 京 に 設 立 し た ア ジ ア 開 発 銀 行 研 究 所(Asian Development Bank Institute:ADBI)の研究・研修活動を通じ、ADB が有する開発の知識と経験をアジア・太平洋地域の途上国に共有するとともに、途上国て MDBs のナレッジ部門は重要なパートナーです。 14 ファイナンス 2025 Jul.3. ナレッジ分野における、これまでの日本と MDBs との協力

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