ファイナンス 2025年7月号 No.716
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SPOT 2025 年世界銀行・IMF 春会合及び G20 財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要*2) 国際通貨金融委員会(IMFC)は、国際通貨および金融システムに関する諸問題について、IMF 総務会に助言および勧告を行うことを目的として、1999 年に前身である IMF 暫定委員会を常設化・改編することで設置された。通常春と秋の年2 回開催。各 IMF 理事選出国・母体を代表する大臣級の委員 25 名から構成される(現在の議長はサウジアラビアのアルジャドアーン財務大臣。日本からは加藤財務大臣が IMFC 委員として参加)。た、アフリカの開発課題の議論では、日本は、アフリカの経済成長の実現に向けて、脆弱な組織、インフラ開発の不足、マクロ経済の脆弱性といった課題に包括的に取り組む重要性や、本年 4 月に日本で関連法が成立した国際開発協会(IDA)第 21 次増資の早期発効の必要性、日本として、本年 8 月に第 9 回アフリカ開発会議(TICAD9)を開催し、アフリカの成長を引き続き支援していくことなどを発言した。このように、今回の G20 では、世界経済が不確実性を増している中にあって、現下の世界情勢や国際金融の状況などを含めた諸課題について、各国が一同に会する場で、多国間で率直な意見交換ができた、非常に有意義な機会となった。春会合の終盤となる 4 月 24 日から 25 日にかけて、第 51回国際通貨金融委員会(IMFC)*2 が開催され、日本からは加藤財務大臣と植田日銀総裁が出席した。今回の IMFC は、2024 年 11 月にサブサハラ・アフリカ地域が 25 番目の IMF 理事に加わって以降、初めて開催された会合であった。会合では、地政学的緊張や貿易政策を巡る混乱の中で、世界経済の動向や IMF の各種政策、IMF の今後のあり方について議論が行われた。日本は、世界経済への認識や為替に関する日本の立場を表明するとともに、サーベイランス・融資・能力開発といった IMF の主要業務において重視する点を述べたほか、これからの IMF を考える上で、10 月のIMF・世界銀行グループ年次総会で日本から提起した議論を発展させる形で以下の点を表明した。まず、各国の国際収支に影響を与えるマクロ的に重要な課題を解決するという IMF のコアマンデートは不変であるという前提に立った上で、(1)外生ショックに脆弱な低所得国や脆弱な島嶼国への支援を IMF のコア業務の一つに位置付けること、(2)国際収支上の課題が多様化する中で、それぞれのニーズに応えるべく様々な融資制度を準備すること、(3)コア業務と位置付けるべき低所得国や島嶼国への支援の財務持続性の確保に向け、長期的には、IMF 協定改正を通じたIMF の一般資金勘定(GRA)から貧困削減・成長トラスト(PRGT)への純益等の直接移転も検討する必要があること、及び、それらコア業務に対する加盟国による自発的資金貢献は、IMF における発言権に反映するのが組織のガバナンスのあり方として当然であること、等を主張した。IMFC における議論の結果は、会合の後に議長国のサウジアラビアから「議長声明」として発出された。この中で、2023 年に合意された第 16 次クォータ一般見直しの下での増資の発効に向けて加盟国ができるだけ早く国内承認を得るべきことが盛り込まれた。併せて、議長声明の付属文書(ディリヤ宣言)において、第 17 次クォータ一般見直しを含む、将来的なガバナンス改革に係る合意形成は、その戦略的重要性から段階を踏むべきであるという認識が共有され、IMF 理事会に対し、IMF のクォータ及びガバナンスに係る将来的な議論を導くための一連の原則を、2026 年春会合までに策定することを求めた。世界銀行・IMF 合同開発委員会では、「繁栄の道筋としての雇用」をテーマに議論が行われた。バンガ世銀総裁からは、世銀グループにおいて雇用創出を重点化し、雇用創出に特に寄与するセクターとして、エネルギー・インフラ、アグリビジネス、保健、観光業、及び製造業に注力する方針が示された。以下、成果文書の概要について紹介したい。前回に引き続き、今回も議論の結果は議長声明として発表された。雇用創出の論点は同声明においても言及され、途上国で今後 10 年間に 10 億人以上の若者が就労年齢に達する見込みであることを背景に、世銀がインフラ基盤の確立、経済改革支援、民間資金の動員等において役割を果たし雇用創出を支援することへの期待が示された。また、世銀グループの保健サービス、農業、社会保護サービス等に関する各目標が歓迎された。エネルギーについては、アフリカの 3 億人に電力アクセファイナンス 2025 Jul. 114  世界銀行・IMF 合同開発委員会(DC)(2025 年 4 月 24 日)3  国際通貨金融委員会(IMFC) (2025 年 4 月 24 日〜25 日)

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