ファイナンス 2025年6月号 No.715
88/92

連載各地の話題初日は、斜面地を活用するに至った経緯や目的について講義していただいた後、実際に現地を見学させていただきました。まず、長崎都市・景観研究所の平山所長より、空き地活用の一例として「さかのうえん」をご紹介いただきました。「長崎における価値観の再構築」などを目的とし、様々な取組みを行っている同研究所ですが、「坂」とみの 1 つになります。空き地を農園として活用することで、除草作業などの管理コストの削減につながるほか、周辺住民との交流の場になるなど、斜面地の活性化にもつながっています。なお、「さかのうえん」には、管理委託という国の制度に基づき、国有地を活用しているものもありますストの増加が懸念されていた本地ですが、「日当たり」を目的としない交流型市民農園として、同制度を活用することとしたものです。続いて、有限会社明生興産の尾上社長より、空き家活用の一例として「贈与型賃貸住宅制度」をご紹介いただきました。先に述べた通り、長崎市は転出超過という課題を抱えており、その要因の 1 つが家賃の高さといわれています。さらに、斜面地の古い物件を現地で建替える場合、費用的にも割高となるほか、法的にも様々な条件をクリアする必要があります。こうした中、同社は、「空き家対策」「子育て支援」等を念頭に、入居当初は賃貸住宅として住み続け、子育てのめどが立つ 10 年後に賃貸のまま住み続けるか、贈与で譲り受けるかを選択できる「贈与型賃貸住宅」という取組みを行っています。同社が安く購入等した空き家をリノベーションすることで家賃も割安になっており、子育て世帯をはじめとした若い世代が斜面地に住むことになるなど、斜面地の活性化につながっています(写真参照)。〈二日目〉二日目は、初日に見聞きした点を踏まえ、意見交換を行いました。様々な組織に所属する様々な年代の方が真剣に解決策について話し合う有意義な意見交換だったと思います。「提供可能な財産の情報提供や地域需要の把握に課題」「今回のようなプレイヤーを見つけることが重要」など、様々な意見が出されたところ、各々が所属する組織においても、斜面地財産の活用に向けた取組みが進んでいくことが期待されます。今回改めて感じたのは、需要を的確につかむことの重要性です。利活用が難しく感じていた斜面地財産ですが、シャ活を通じて様々な需要の存在に気付かされました。さらに、「地域課題の解決」に対する関心の高さについても再認識させられました。真剣に意見交換する参加者の様子に加え、多くのマスコミの方に会議の様子を取り上げていただいたこと、その報道を見た団体等から反響があったことも、非常に印象的でした。今後も様々な方と意見交換しながら、斜面地をはじめとした多種多様な地域課題の解決に向け、取り組んでいきたいと思います。長崎市〈初日〉「農園」を組み合わせた「さかのうえん」もその取組(写真参照)。売払いの見通しが立たず、今後の管理コ「景観」といった面から農園に最適とのことで、営利 84 ファイナンス 2025 Jun.4.まとめさかのうえんリノベーション後の一室

元のページ  ../index.html#88

このブックを見る