連載各地の話題 市内周遊観光による交流人口の拡大や地域活性化の拠点を担う複合観光施設「道の駅おが(愛称:なまはげの里オガーレ)」と JR 男鹿線終点の駅として「東北の駅百選」に選定されている男鹿駅の開業により、駅周辺エリアでは新たな人の動きが生まれはじめました。この流れを確かなものとし、駅周辺エリアの求心力を高め、近隣の商店街はもとより市内全域に経済効果が波及するよう、両施設の間に位置する鉄道用地を新たに取得し、多くの人々の交流の場として男鹿駅周辺広場を整備しました。男鹿駅周辺広場においては、「男鹿日本海花火」や「なまはげ柴灯まつり」など、市の核となる誘客イベントのサテライト会場として多くの人々が集うほか、近接する重要港湾船川港に寄港したクルーズ船からは、距離的なメリットを生かし、乗船客やクルーが船旅の合間に憩いのひと時を過ごす姿が見られます。市では、男鹿駅周辺エリアをまちづくりの拠点と位置付け、多様な主体による交流や地域課題の解決に向けたチャレンジの取り組みを後押ししながら、複合観光施設の整備当初に掲げた、「~“住んでよし、訪れてよし”の男鹿の共創~」の実現に向けて引き続き努めていきます。船川港はこれまで、日本海に突き出した半島の優位性から、古くから天然の良港として知られ、交易の拠点、船舶が避難する「風待ち港」として利用されてきました。特に、日本鉱業株式会社(現 ENEOS 株式会社)による大規模な石油精製事業が展開された昭和 30 年~50 年代、それに続く国家石油備蓄基地が建設された昭和 50 年~平成初頭にかけては、それぞれ船川港の第 1 次並びに第 2 次隆盛期でした。しかしながら、それ以降は取扱貨物量や入港船舶数が減少し、魅力ある港湾としての役割が低下してきています。こうした中、令和 2 年 10 月、国では深刻化する地球温暖化対策の一環として 2050 年カーボンニュートラルが宣言され、その実現に向け、再生可能エネルギー、とりわけ洋上風力発電の導入拡大を最優先で進める方針が示されました。現在、国内でも洋上風力発電事業が特に進展する日本海側北部において、船川港は秋田、能代の両基地港湾の中間に位置し、冬季でも広大な静穏海域を有する優位性から、将来の浮体式洋上風力までを見据えた事業展開をはじめ、関連産業の人材育成や運営・保守拠点など、多面的な役割が期待されています。こうした将来性を踏まえ、昨年 4 月以降、洋上風力発電関連の訓練センター「風と海の学校 あきた」や、日本海側最大の船揚場を有する大型船舶等の修理拠点が順次整備され、具体の動きが着実に進んでいます。さらに、能登半島地震の教訓を踏まえ、能登半島と立地条件が類似している男鹿半島で災害が発生した場合に備え、半島防災の観点から、海上からの救援物資やDMAT 等の救援人員の受入・輸送拠点としての期待も高まっており、港湾施設の耐震性強化や老朽化対策など、災害に強い港湾整備も急務となっています。こうした洋上風力発電事業の進展等を見据え、港湾機能の強化が求められる中、昨年 8 月、実に 27 年ぶりに船川港港湾計画が改訂されました。改訂された港湾計画では、水深 12 メートルの大水深岸壁の整備とふ頭用地・工業用地合わせて約 36 ヘクタールの造成、洋上風力発電事業の運営・保守の拠点化に向けた小型船舶の係留施設の整備のほか、延長 185 メートルの耐震強化岸壁整備などが盛り込まれています。今後、計画に基づき、船川港の機能強化が着実に進むことにより、地域産業の振興や新たな雇用創出はもちろん、物流・人の流れが活発化し、宿泊や飲食、観光誘客や特産品の需要拡大など、地域全体への多大な波及効果が期待されています。男鹿市(4)男鹿駅周辺広場の整備(5)男鹿駅周辺広場の活用状況と今後の展望ファイナンス 2025 Jun. 793. 進化する船川港(港湾機能強化と関連産業の振興)男鹿駅周辺広場整備前後の状況にぎわいを創出する男鹿駅周辺広場整備前整備後
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