ファイナンス 2025年6月号 No.715
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H路線価でひもとく街の歴史連載路線価でひもとく街の歴史 一ツ葉有料道路市街図ハ ロ ウ仙台市出身、1993 年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06 年)出向等を経て2008 年から大和総研。主著に「公民連携パークマネジメント:人を集め都市の価値を高める仕組み」(学芸出版社)プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦73/11~宮交シティ(イオン南宮崎店)同32,000㎡2005/5 イオンモール宮崎店舗面積 84,000㎡大淀川宮崎空港図 4 広域図 (出所)地理院地図 vector に筆者加筆出店に対抗し、宮崎山形屋は平成 18 年(2006)に新館を増築した。現在、元の橘百貨店は「MEGA ドン・キホーテ宮崎橘通店」(館名:宮崎ナナイロ)となっている。寿屋百貨店は商業施設「カリーノ宮崎」である。宮交シティは核店舗が「イオン南宮崎店」になった。宮崎駅前には令和 2 年(2020)11 月にアミュプラザがオープン。駅前広場の景観が大きく変わった。昨年(令和 6 年)の最高路線価は橘通西 3 丁目橘通りである。住居表示で地点名は変わったが場所は以前と変わらない。旧橘通五丁目を継承している。商業面で受けた影響は大きかったが、一方で明るい兆しもある。マンション新築等が功を奏し、中心市街地の夜間人口は、イオンモールが出店した平成 17 年(2005)を底に微増傾向をたどっている。再生に向けた様々な取り組みの中でも興味深いのは、平成 27 年度(2015)に始まった「マチナカ 3000 プロジェクト」だ。令和6 年度までの 10 年間で、中心市街地に ICT、広告、デザインなどクリエイティブ産業の雇用を創出する取り組みだ。市街地の空き物件を解消するため、特定業種の雇用にターゲットを絞った点が画期的だ。計画は順調に推移し令和 3 年度で目標を達成した。令和 7 年 4 月には「まちなか投資倍増プロジェクト」を打ち出した。建物の老朽化や都市のスポンジ化が進む中心市街地において、リノベーションにつながる民間投資の促進を目指すものだ。もって「居心地が良く歩きたくなるまちなか」(ウォーカブルシティ)の実現を図る。高千穂通の歩道には、通称「ほこみち」制度によって、オープンカフェやベンチなどを置ける空間(利便増進誘導区域)が指定された。歩道の幅が拡張されている。今年 4 月には高千穂通に面した場所にAROW 高千穂通がオープンした。旧 NTT 宮崎支店北棟をリノベーションした複合商業施設である。ちなみに、冒頭紹介した東村アキコ作「かくかくしかじか」で主人公(=作者)が美大卒業後に就職したのが NTTで、作中にリノベーション前のビルが登場する。郊外化と駅前と旧市街の再生ファイナンス 2025 Jun. 61みそぎ池シ阿ーガ波イア岐原宮崎神宮開を進めていたジャスコだった。翌年、ジャスコ全額出資の「橘ジャスコ」が設立され、昭和 52 年(1977)1 月に百貨店をいったん閉店した上、同年 4 月に量販店「橘ジャスコ」として再開した。ただ、昭和 63 年(1988)5 月に店舗を新築し再び百貨店となる。当時ジャスコが展開していた百貨店業態のブランド「ボンベルタ」を冠した「ボンベルタ橘」になった。宮崎の場合、車社会化が進んでも中心商業への影響は他都市に比べれば小さいほうだった。それでも、平成 17 年(2005)にオープンしたイオン宮崎ショッピングセンター(現・イオンモール宮崎)の影響は大きかった。イオンモールは平成 30 年(2018)に増床して南九州最大規模となった。郊外のイオン宮崎 SC の

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