SPOT *25) 区分表示などについては議論の余地があると考えています。*26) 三菱東京 UFJ 銀行円貨資金証券部(2012)では、この統計の短所として、「発行市場データを含まないことから主にメガバンクについては不十分」(p.321)と指摘しています。*27) https://www.jsda.or.jp/shiryoshitsu/toukei/tentoubaibai/ten_kai.pdfブローカーズ・ブローカー(出所)筆者作成証券会社証券会社取引取引取引取引証券会社証券会社取引取引業者間市場取引取引図表 11 対顧客市場と業者間市場対顧客市場投資家投資家・ 財務省(「その他」に区分)が、ある証券会社に Tビルを 100 億円売却する・ 外国人投資家(「外国人」に区分)が、その証券会社から 100 億円購入するという形で証券会社が調査票に記入します。つまり、「その他」の売却額として 100 億円、「外国人」の買付額として 100 億円、計上されます。もっとも、上記の取引のうち、財務省から証券会社が Tビルを購入する取引については、実態としては流通市場(セカンダリー市場)での取引ではなく、発行市場(プライマリー市場)での取引としてとらえるべきと感じます。したがって、筆者は、このデータを実際に使う場合、国債に関し、セカンダリー市場の売買をみる上では、「その他」に計上される売付額は控除すべき、と考えています(前述のとおり、「その他」にはゆうちょ銀行などを含むことから、「その他」の売付額にはもちろん日本政府以外の取引も含まれます。しかし、政府による国債の発行が巨額であることを考えると、「その他」の中で日本政府との取引が圧倒的な割合を占めていると推論されます)。ただし、証券会社が財務省や日銀の取引についても報告することにより、後述の通り、証券会社を通じない入札参加額を一定程度把握できる側面もあり、国債発行の取引をこの統計に含める必要がないと筆者が指摘しているわけではない点に注意してください*25。同様に、日銀がオペレーション(公開市場操作)を行い、協会員がオペに参加する場合、日銀は協会員と債券を売買しますが、この場合も「その他」による売買として報告されます(オペレーションの詳細は服部(2023)の 9 章を参照)。国債入札や日銀オペにおける証券会社を介さない取引国債の入札や日銀のオペレーションでは、最終的な投資家が、証券会社を通じて落札するのではなく、直接財務省や日銀から落札する場合もあります*26。これらの取引は協会員が参加していないことから、公社債店頭売買高には反映されない取引になります。一方、実際の国債発行額や日銀のオペレーションによる売買額は、財務省や日銀のウェブサイトで開示されているため、これらと公社債店頭売買高における「その他」の売却額や買付額と比較することで、国債の入札や日銀のオペレーションにおいて直接落札額がどれくらいであったかを推定する市場参加者も少なくありません(もちろん「その他」の売買額は日本政府や日銀以外の売買も含むため、誤差を有する粗い推計である点に注意が必要です)。売買の相手方の区分として「債券ディーラー」がある点も特徴です。債券ディーラーの定義は下記のとおりです*27。4.3 債券ディーラーファイナンス 2025 Jun. 43日本証券業協会「公社債店頭売買高」入門投資家投資家
元のページ ../index.html#47