ファイナンス 2025年6月号 No.715
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映SPOT*9) ただし、年間上限額(6 億 5000 万ドル)の範囲内に限る。*10) IDA21 では、所得水準や債務持続可能性の分析に応じて、満期 25〜40 年の融資(金利は 0〜1.5%の固定金利又は変動金利)を供与。*11) 最終会合後も、2025 年 3 月に地政学的変化を受けた緊急会合(於:パリ)、4 月に IDA20 の実施状況の確認や IDA21 の準備を行うための会合(於:*12) IDA21 では、開発インパクトを重視しつつ政策目標や評価指標を簡素化・効率化した新しい政策パッケージに合意した。IDA の計画段階では、合意された重点政策や分野横断的な視点に沿って、引き続き世銀グループの国別戦略やテーマ別戦略が参照され、実施段階では、従来よりも簡素化されたIDA21 の政策目標が参照され、成果のモニタリング段階では、従来の成果測定システムに代わってより包括的かつデータを細分化して把握できるIDA21 Scorecard が導入されることとなった。ワシントン DC)を開催するなど、IDA の議論は継続。化、防災の主流化、債務の透明性の向上等への支援に積極的に取り組んできた。これまでの成果として、2億 1,200 万回の新型コロナワクチン接種を実施する(債務リスクが高い)又は過剰債務と判定された国に2023 年 12 月の IDA20 中間評価会合における IDA21(於:ソウル)で合意に至った*11。与される。例えば、世界銀行と国際通貨基金(IMF)が行う低所得国向け債務持続可能性の分析で赤信号対しては全額贈与*9 による支援が行われる。その他の国に対しては、小国向け支援の例外を除き、融資による支援が行われる*10。IDA の増資交渉は、低所得国支援に係る今後 3 年間の支援方針や資金規模について合意形成を行うものであり、更にその資金規模の大きさからも、国際的な開発支援の方向性の議論に与える影響力は非常に大きいものとなっている。そのため、IDA 増資交渉は、途上国の開発に携わる関係者にとって最も重要なイベントの一つとなっており、昨年の G7・G20 等の大臣・首脳級の国際会議においても、強固で効果的な IDA21の達成が言及されている。実際の増資交渉は、資金貢献を行うドナー国や支援対象国の代表者、IDA 事務局が一堂に会する増資会合等を通じて行われる。IDA21 増資交渉については、の戦略的方向性の議論に始まり、2024 年以降、計 4回の公式な増資会合(うち 1 回は支援対象国で開催することが通例となっており、今回は第 3 回会合をカトマンズで開催)と、大小様々な非公式会合や市民社会組織(CSO)とのパブリック・コンサルテーション等を経て、第 5 回目となる 12 月 5 - 6 日の最終会合増資会合では、主に IDA の政策面と資金面の議論が行われる。IDA21 では、最初の半年ほどかけて、前回増資の成果に対する評価も踏まえ、次の増資期間に取り組む IDA の方向性や重点政策を中心に政策面の議論*12 を行った。その後、資金面の議論を本格化させ、重点政策の実施に必要となる資金規模と、そのうちドナー国に追加貢献を求める目標規模について合意を形成した。その上で、最終会合において、日本を含む各国がそれぞれの貢献額を表明することで、最終的な支援規模が確定した。以下では、IDA21 増資交渉で議論された重点政策と増資規模について見ていきたい。IDA21の増資交渉プロセス3.IDA21 増資交渉 28 ファイナンス 2025 Jun.• 重点政策の進捗確認• 目標の調整• 重点政策の設定• 目標、成果指標の設定• 各国はそれぞれ重視する開発課題を主張• 支援対象国やNGO等の意見も反2023年12月IDA20中間評価前回増資の中間評価2024年3月4月6月第1回増資会合第2回増資会合第3回増資会合政策面の議論10月12月第4回増資会合プレッジ会合資金面の議論• 支援条件の決定• 全体の支援規模と資金配分計画の決定• 目標となるドナー貢献額の設定• プレッジ会合にて、各国が貢献額を発表(プレッジ)(増資会合の様子)表 2:IDA21 の増資交渉プロセスとともに、52 か国が防災を国家の優先事項に制定し、債務透明性の観点から 39 か国が定期的に公的債務報告書を発行し、9,300 万の通信アクセスを改善するなど、短期間に大きな成果を挙げている。IDA20 は着実な進□があったと言えるだろう。コラム 1:IDA20 の成果2021 年 12 月に合意された前回増資(IDA20)は、2022 年 7 月〜2025 年 6 月を対象としており、パンデミックを含む保健危機への予防・備え・対応の強

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