SPOT*8) 他にも「高知県の坂本龍馬」、「秋田県の白瀬矗」、「大分県の双葉山」、「宮城県の伊達政宗」や「福島県の野口英雄」がある。*9) 他にも「島根県の御取納丁銀(お金の図柄にお金)」や「岡山県の桃太郎(おとぎ話の登場人物)」等がある。貨企画調整室の職員、図案化を担当する造幣局のデザイナー、更にはデザイン原案を専門的な見地で意見をして頂く著名な有識者等の腕の見せ所である。今回の国立公園記念銀貨は、地域の特色を図柄に表現しており、それぞれの地域の方は、特にその地域のお金として、少しでも興味を持って頂ければと考えている。さて、このような地域の特色を図柄に表現した記念貨幣、かつ、複数種・複数年という形式発行したもうひとつの例として、平成 20 年から平成 28 年の 9 年間にわたって、47 の都道府県別にそれぞれ発行した「地方自治法施行 60 周年記念千円銀貨(以下、地方自治記念銀貨)」及び「地方自治法施行 60 周年記念五百円バイカラー・クラッド貨(以下、地方自治記念五百円貨)」がある。ちなみに令和 3 年 11 月から流通が開始され、皆さんも買い物等で使用する通常貨幣のバイカラー・クラッド五百円貨の先祖が地方自治記念五百円貨である。この地方自治記念銀貨等は、地方の特色を図柄に表すため、各都道府県から図柄の題材を選定してもらったところであるが、これまでに無い題材がいくつか採用されることとなった。例えば、実在する人物が貨幣の題材となっていることは諸外国の貨幣では珍しくないものの、日本ではこの地方自治法施行 60 周年記念貨幣の「佐賀県の大隈重信」や「埼玉県の渋沢栄一」等*8 が初めてとなった。その他にも「茨城県の H- Ⅱロケット」や「福井県の恐竜」等*9 というのも記念貨幣の題材として初めて採用されている。ちなみに、この地方自治記念銀貨は抽選販売であり、申込者の地域属性を大雑把に確認すると、自らが住んでいる都道府県のものを申し込む傾向が見られた。貨幣全般に興味のあるコインコレクターは、デザインや材質等を吟味し購入するかを決めているようであるが、このように地域色が強いものは、郷土愛が購入意欲に繋がる例とも言えるのであろう。最近ではキャッシュレス決済が浸透しつつあり、またデジタル化が進むことで現金離れの傾向が徐々に強くなっている。それ自体は時代の流れであり、抗う必要は無く、より便利で合理的な生活を営む上で必要なことであると考えている。また、通貨企画調整室が属する財務省理財局国庫課には、現金同様の機能(交換、価値保存、価値尺度)を概ね持つこととなるであろう「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」について検討しているチームもあり、時代に合った通貨のあり方を考えている。ただし、現在、円という通貨の現物は貨幣と紙幣のみであり、災害時の停電等によりキャッシュレス決済が困難な場合であっても安心して買い物ができるという現金の実用面での役割、また現金志向の方のファイナリティがある決済手段としての役割は、当面必要とされ続けると考えている。これら現金に対する需要が世の中で一定程度ある限り、これを必要に応じて提供することが国の役割であるといえる。このように経済活動に使用される役割を持つ通貨に接する機会が過去に比べて少なくなる一方で、国家的な記念事業のためという別の役割を持つ記念貨幣の必要性は不変であると考えている。日本における記念貨幣の役割は、皇室の御慶事や日本で開催される国際的な行事等といった国家的な記念事業のために、それを連想する図柄を用いて発行しているところであるが、先進国を含む諸外国においては、何周年記念ではない単に自国の文化等を図柄に用いた特別な貨幣を発行することも多い。このため、日本に3.都道府県毎の図柄で発行した記念貨幣通貨の役割おわりに 24 ファイナンス 2025 Jun.□城県 表面:H-Ⅱロケットと筑波山埼玉県 表面:渋沢栄一と時の鐘
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