ファイナンス 2025年6月号 No.715
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SPOT *4) 貴金属製の貨幣の重さは、世界的に貴金属の取引単位であるトロイオンスが用いられることが多い(1 トロイオンス= 31.1034768g)。*5) 図柄はレリーフ(刻印による凹凸)とカラー印刷により表現されている。*6) 通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律:(法貨としての通用限度)第 7 条 貨幣は、額面価格の二十倍までを限り、法貨として通用する。*7) 記念貨幣が世界の収集家から支持を集める理由として、強制通用力を持つ通貨であることの他に、発行テーマ、デザイン、更には材質(金や銀)があちなみに、国立公園記念銀貨の材質は純銀、重さは1トロイオンス*4、直径が40ミリメートルとなっている。(1)複数種・複数年発行記念貨幣はテーマ毎に単年度に 1 種類を発行するものが多いが、場合によって多様な記念貨幣を、また複数年にわたり発行するケースがある。令和 6 年から令和 13 年の 8 年間にわたり多様な図柄で発行を予定している国立公園記念銀貨もこれにあたる。令和 7 年 3 月現在、35 公園が国立公園として指定を受けており、例えば、どこかひとつの公園だけを図柄の題材として 1 種類発行する方法もあるが、我が国の傑出した自然の風景地であり、生物多様性保全の屋台骨である 35 カ所の国立公園からひとつ、もしくはいくつかに絞り込むことは困難と考え、公園毎の図柄で複数年度にわたり発行することとしたものである。(2)図柄の原案国立公園記念銀貨の表面の図柄は、公園毎にその特色を表現する図柄*5 とし、裏面の図柄は「国立公園統一マーク」を描いている。余談になるが、財務省の仕事というと、一般的に国の予算や税制を担当するというイメージを持つ方が多いと思うが、通貨企画調整室では、図柄の選定など記念貨幣の企画等は芸術的な一面のある仕事であり、財務省の業務としては珍しい部類である。なお、記念貨幣も流通する通常貨幣と同様に一枚一枚が強制通用力*6を持つ通貨であることには変わりなく、図柄は通貨法に基づき発行毎に政令で定められるなど厳格なものとなっている。この厳格さや強制通用力を持つ通貨であることが信頼に繋がり、故に世界にコインコレクターが多く存在するという背景であろう*7。さて、国立公園記念銀貨にどのような風景や特徴的なものを描くかは、国立公園を所管する環境省と財務省との連携はもちろんのこと、場合によっては現地に赴いて実際に国立公園の特筆すべき風景等を視察し、また国立公園管理事務所や地方公共団体等の現地関係者と意見交換を行いながら検討していくこととなる。現地関係者と意見交換することにより、地域における国立公園への思いを知ることができる。その思いを銀貨の直径 40 ミリメートルの中により強く込めることが出来るかが、企画立案を担当する通ファイナンス 2025 Jun. 23(上)筆者が福岡財務支局長崎財務事務所の田原秀司所長協力のもとで今後発行を予定する西海国立公園を視察、(下)同公園が所在する長崎県庁担当者との意見交換風景西表石垣国立公園  表面:川平湾とイリオモテヤマネコ 裏面:国立公園統一マークる。更には、額面金額が最低限の価値(基本的に無価値にはならない)となっていることも、購入する際の安心感に繋がっていると言われている。地方を盛り上げる一助となる記念貨幣の発行

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