ファイナンス 2025年6月号 No.715
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SPOT明治 35 年会計法500 円200 円契約の類型一 工事又は製造の請負二 財産の買入れ三 物件の借入れ四 財産の売払い五 物件の貸付け六 前各号に掲げるもの以外のもの(表 5)少額随契の基準額の推移(※明治憲法下での経緯)明治 22 年会計法工事物品の買入れ物品の借入れ改正前都道府県・指定都市指定都市を除く市区町村250 万円160 万円80 万円50 万円30 万円100 万円工事又は製造1000 円財産の買入れ物件の借入れ物件の貸付け400 円財産の売払いその他の契約都道府県・指定都市130 万円400 万円80 万円300 万円40 万円150 万円30 万円100 万円30 万円50 万円50 万円200 万円大正 11 年会計規則 昭和 21 年会計規則5000 円3000 円1500 円500 円1000 円2000 円改正後指定都市を除く市区町村200 万円150 万円80 万円50 万円30 万円100 万円7 万円5 万円2 万円1 万円2 万円3 万円*8動産の売払い(参考 1)戦前の少額随契制度の変遷明治22年2月11日、大日本国憲法(以下「明治憲法」)が発布され、同時に憲法附属法の一つとして会計法が制定された。明治憲法第6章は「会計」と章名が付されているが、その実財政に関する基本原則が規定されているように、明治憲法下では「会計」は会計手続きのみならず財政・会計全般を指す意味で用いられていた。この会計法は財政制度について規定するとともに、「第八章 政府ノ工事及物件ノ売買貸借」という章が置かれて、競争入札の原則が定められるともに例外として随意契約できる事項が列挙されており、ここで国の契約制度が初めて確立されたといえる。少額随契についても規定されており、500 円以下の工事又は物品の買入れ・借入れと、見積価格 200 円以下の動産の売払いについては随意契約によることが認められている。その後、明治 35 年、物価上昇の状況を踏まえて、基準額は 2 倍に引き上げられた。*8大正 10 年の会計法の全面改正では、随意契約事由は法律事項ではなくなり、翌年制定された会計規則(勅令)で定められることとなった。少額随契については同規則 114 条 4 号から 8 号にかけて、(1)工事又は製造、(2)財産の買入れ、(3)物件の借入れ、(4)物件の貸付け、(5)財産の売払い、(6)その他の契約の 6 つの類型に分けて規定され、この区分が今日まで維持されている。太平洋戦争後、憲法を含めた法体系全体の見直しが行われる中で、会計法令においては戦後のインフレ等に対応するための喫緊の対応として、先だって昭和 21 年に会計規則の改正が行われた。少額随契については、類型によって異なるが、基準額が 14 倍~20 倍に引き上げられている。翌 22 年 3 月、新たに制定された日本国憲法において国会による財政統制が強化されたことに伴い、旧会計法のうち財政制度については大幅な見直しを行ったうえで財政法として独立して法制化された。他方、会計制度については概ね旧規定が引き継がれ、少額随契の基準額については、新たに制定された予算決算及び会計令において旧会計規則の内容がそのまま維持されることになった。 20 ファイナンス 2025 Jun.(表 4)自治法施行令別表 5 の新旧表*8) 会計法中改正法律案(政府提出)の提出者である荒井賢太郎政府委員は、提案理由を「会計法ハ既ニ三十年前ノ規定故當時ハ現今ト物價異リ貨幣制度改革以来半分ニナリタル譯故・・・随意契約中工事又ハ物品ノ買入借入ノ價格若クハ動産ヲ賣拂フ場合ニ於ケル見積價格ハ實際ノ狀況ニ照シ不便少ナカラサルヲ以テ本案ヲ提出シタリ」と述べている(第 16 回帝国議会、明治 35 年 2 月 26 日)。

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