ファイナンス 2025年5月号 No.714
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1.財金研の黎明期財務総合政策研究所 総務研究部 総務課長 川本 敦総務研究部 主任研究官 大西 宏典総務研究部 研究官 正司 貫統当時は、行政改革の機運が高まっていた時代でした。大蔵省の中では、大臣官房調査企画課(現・財務省大臣官房総合政策課)が調査・研究を行う部署として存在していて、また、大蔵省の外郭団体として、財政研究所という社団法人が存在していたところを、これらの調査・研究機能を集約して、省内に財政金融研究室が創立されました。財政金融研究室の初代室長には、伊吹文明氏(元・衆議院議長)が就任されました。伊吹さんは、京都大学経済学部のご出身で、ようやく経済学を活かせる仕事ができるようになって、小さな組織ではありましたが、大変喜んで仕事をされていたように思います。それから、財政金融研究室を拡充して、1985年に財金研が創立され、初代の所長には、経済学者の館龍一郎先生が就任されました。私が所長になったときには、舘先生は顧問になられていたのですが、舘先生はいつも顧問室にいらしていて、良くご指導いただきました。――財金研が創立された翌年には、現在まで刊行が続けられている学術誌『フィナンシャル・レビュー』が創刊されました。創刊後間もない、第2号や第4号には、黒田先輩の論文も収録されていますが、こうした論文を執筆された経緯をお聞かせください。第2号(1986年8月号)に掲載された「補助金と交付税に関する理論的分析」という論文は、地方公共団体への国からの補助金と地方交付税交付金を、どのように使い分けるべきかについて、経済理論に基づいて分析しています。補助金は、地方公共団体に対して特定の支出を促すものですから、できるだけ定率にした方が効果的ですし、他方で地方交付税交付金は、地 90 ファイナンス 2025 May.[プロフィール(インタビュー時点)]黒田 東彦政策研究大学院大学特任教授/政策研究院シニア・フェロー1967年に東京大学法学部を卒業後、大蔵省(現・財務省)に入省。オックスフォード大学留学等を経て、財政金融研究所長、国際金融局長、財務官等を歴任。財務省退官後は、内閣官房参与、一橋大学教授、アジア開発銀行総裁等を経て、2013年に第31代日本銀行総裁に就任。2023年に退任し、現職。「財金研」)が創立されてから40周年を迎えます。今2025年5月に、財務総合政策研究所(以下、「財務総研」)の前身となる大蔵省財政金融研究所(以下、回のPRI Open Campusでは、財務総研創立40周年を記念して、1996年~1997年に財金研所長を務められた、黒田東彦氏にインタビューを行い、財務総研が担うべき「シンクタンク機能」の過去と未来について、お話を伺いました。――本日はインタビューをお引き受けいただき、ありがとうございます。最初に、黒田先輩が所長になられる前のことですが、財務総研の前身である、財金研が創立された頃のお話をお聞かせください。「シンクタンク機能」の過去と未来財務総合政策研究所 創立40周年記念黒田東彦・元所長に聞く  43PRI Open Campus~財務総研の研究・交流活動紹介~連載PRI Open Campus

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