ファイナンス 2025年5月号 No.714
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連載海外 ウォッチャー2025202620270.20.20.00.30.30.20.00.40.50.20.10.70.80.20.50.11.41.30.70.80.22.21.61.01.00.22.81.72.73.5(出典)IMFスタッフレポート歳入課税ベースの拡大と税支出の縮小インボイスの電子化税務・税関行政の改善合計歳出人件費の削減 うち、プログラム下の構造的政策物品・サービス支出の削減自治体への交付金の合理化合計合計 86 ファイナンス 2025 May.*4) ソブリン・バンク・ネクサス(Sovereign-Bank Nexus)は、政府と銀行の相互連関を指し、一方で発生したショックが負のループを引き起こし、ショックの影響を増幅させうるリスクを指す。IMF ワーキングペーパー ”The Sovereign-Bank Nexus in Emerging Markets in the Wake of the COVID-19 Pandemic”を参照。*5) エルサルバドルでは、ʻescalafónʼと呼ばれる公務員給与の自動昇給制度がの公務員給与体系に盛り込まれている。(図表3)財政調整の内訳(年間の累積影響額、GDP比)1.財政健全化策40%(5.7億米ドル)が中央銀行に割り当てられ、中(8億米ドル)は、(1)中央銀行における非金融公共6億米ドル増額)、および(2)財政赤字の補填(2億2027年までにより低い金利で国際金融市場にアクセ部資金調達の見込み、および主要な改革の実施時期を踏まえたものとなっている。IMFからの融資資金は、予算支援および中央銀行の準備金の引き上げに利用される。プログラム総額の約央銀行の準備金の増加に用いられる。残りの約60%部門(NFPS)の預金の積み増し(2028年までに歳出の約1か月分の流動性バッファーを確保するため、米ドル)に使われる予定。これにより、財政および対外不均衡の是正が進む中で、対外資金調達ニーズの緩和が促進される。また、プログラムによる融資は、ソブリン・バンク・ネクサスのリスク*4を軽減するとともに、民間セクターに対する信用供与の確保と年金基金の資産の多様化を促すことが想定されている。さらに、後述の財政健全化の取り組みとあわせて、国債のスプレッドはさらに縮小し、エルサルバドル政府はスできるようになることが期待されている。また、IMFからの融資に加えて、世界銀行(WB)、米州開発銀行(IDB)、その他の地域開発銀行(中米経済統合銀行(CABEI)、ラテンアメリカ・カリブ開発銀行(CAF))からの追加的な資金援助も見込まれており、プログラム期間中には、総額35億米ドルを超える資金調達パッケージが実現する見込みである。IMFプログラムのレビューは、最初の2回は四半期毎のレビューを、その後は半年ごとのレビューを予定している。最初の四半期毎のレビューは、プログラムの信頼性と触媒効果を高めるために重要な早期のプログラム実施を確保するために、その後の半年毎のレビューは、構造改革を実施するために必要な期間を前提にしている。財政の持続可能性を回復するために、IMFプログラム下では、非金融公共部門の基礎的財政収支を3年間でGDP比約3.5%改善し、2027年末までにGDP比3.7%の基礎的財政黒字を達成することを目指す。2025年予算の下で、GDP比1.7%程度の改善が見込まれており、2025年にはGDP比1.9%の基礎的財政黒字が達成される見通し。エルサルバドルは、すでに他の諸国と比較して高い税負担率となっているため、当局の計画は支出の合理化に重点を置いている。(図表3)歳出面では、人件費の削減が重点的に実施される。具体的には、早期退職等により欠員となった役職の廃止、給与の増額停止、医療分野における自動昇給*5の適用を低賃金労働者に限定すること、および今後の雇用契約における新たな給付の付与を停止することが含まれる。さらに、物品・サービスへの歳出の実質ベースでの削減や、2023年の自治体数削減に伴い、自治体への交付金がより一層合理化される予定。これらの措置により、2025年にはGDP比1.4%の削減が見込まれる。翌年以降、2027年末までにGDP比2.8%の歳出削減を累積で達成するためには、更なる取り組みが必要であり、世界銀行の技術支援を受けて2025年6月末までに取りまとめられる予定の公務員改革計画では、自治体数削減と公務の効率化が見込まれている。一方で、国内におけるインフラおよび社会格差が大きいことを踏まえ、IMFプログラムでは、GDP比2.5%を下限とした公共投資とGDP比1.5%を下限としたソーシャルプログラムへの的を絞った支出が優先的に確保される。また、効果的な支出を担保するた

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