ファイナンス 2025年5月号 No.714
87/112

都城大丸閉店11年197580859095000610図4 Mallmall(まちなか広場から図書館を臨む)0T永路線価でひもとく街の歴史連載路線価でひもとく街の歴史 たかひさテラスタまるまる(注)05年のデータを入手できなかったため06年で代替。(出所)国税庁「路線価図」から筆者作成25020015010050(出所)令和7年3月23日に筆者撮影千円/m275Mallmall開業1820706560555045仙台市出身、1993年七十七銀行入行。東北財務局上席専門調査員(2004-06年)出向等を経て2008年から大和総研。主著に「公民連携パークマネジメント:人を集め都市の価値を高める仕組み」(学芸出版社)千円/m23103931021沖水橋駅前牟田町中町上町1524プロフィール大和総研主任研究員 鈴木 文彦ファイナンス 2025 May. 83図3 路線価の推移 中町・上町駅前沖水橋転することになり、10月末に計画案が公表された。現在、大屋根で覆われた「まちなか広場」を囲むように複合施設「M路を挟んで広場の東側が平成30年(2018)4月に開館した都城市立図書館である(図4の奥)。人が集まるオープンスペースという点で広場と連続している。広場の西側は公共施設棟で、市の保健センター等が入っている。中央通りに面しており、1階はバスステーションになっている。広場の南側にはフードコート、パティオ型商店街「C-PLAZA」、映画館などがある。広場の北側には、ホテルなどが入る複合施設のERRASTAがある(図4左側)。令和4年4月の開業で1階はスーパーマーケットになっている。休日ともなれば広場で様々なイベントが催allmall」がある。道た。平成16年(2004)、百貨店の裏手にオープンした「都城大丸センターモール」だが、7年後に百貨店の破たんに伴って閉店してしまう。都城大丸の閉店の翌年、池田宜任した。地元出身で平成6年大蔵省入省、平成24年(2012)6月に財務省を退職後、11月に市長となった。その後、様々な活性化施策が打ち出されていく。中心市街地の再生についても逆転の発想があった。郊外大型店に対抗せず、商業拠点以外の集客拠点を配置する戦略である。論点は空きビルとなった都城大丸センターモールの活用策だ。平成25年(2013)当初は商工会議所主導で百貨店を核店舗としたテナントに再生する方向だったが、アンケート結果を受けて市との連携を模索。再検討の結果、老朽化していた図書館を移氏が都城市長に就され図書館側の道路にはキッチンカーが店を出す。都城市立図書館は開館3週間で来館者10万人を突破、6年5か月後の令和6年9月14日には累計来館者が1,000万人に達した。計画段階で想定していた年間27万人を大きく上回る成果となった。都城市はふるさと納税の取り組みでも注目されている。寄附金額は平成26(2014)年度には全国9位となり、翌年には日本一となった。躍進の要因は、都城のブランド力向上を狙い、返礼品を「肉と焼酎」に特化した点にある。以来令和5年度まで10年連続でトップ10入りし、同年度を含め日本一は通算5回に及ぶ。こうして得た自主財源をもとに、子育て支援や移住促進策が展開されている。令和5年度に始まった目玉施策が「3つの完全無料化」、すなわち第1子からの保育料、中学生までの子ども医療費、妊産婦検診費用の無料化だ。移住応援給付金も始まった。こうした施策が奏功し、都城市への移住が増えている。令和5年度の移住相談件数ランキングで全国1位、実際に移住した人は3,710人と急増。その結果、13年ぶりの人口増加となった。

元のページ  ../index.html#87

このブックを見る