SPOT CBCBCBリパッケージ債SPCSPC(1)100円CBリパッケージ債SPCはリパッケージ債の発行100円(償還)(4)CBアセット・スワップ(2)100円100円(償還)(注)実際には、SPCとヘッジファンドの間に証券会社が入りますが、証券会社を捨象した簡略化された図になっている点に 注意してください。(出所)河合・糸田(2007)を参照し筆者作成(出所)筆者作成地銀(リパッケージ債保有者)地銀(リパッケージ債ヘッジファンドCBの発行体*15) 本文では、当初にオプション料を支払う仕組みで説明しましたが、実際にはスプレッドを用いて取引を行っています。例えば、年限5年のCBを、ヘッジファンドが当初90円で売るとします(利回りは2%に相当)。もしヘッジファンドが直後に権利行使したら、例えば、95円で買い戻す(利回り1%に相当)という形でヘッジファンドがコストを支払う仕組みになっています。3年経過し、残存2年になったタイミングでヘッジファンドが権利行使した場合、当初90円で売り、98円で買い戻すという形になり、権利行使が遅くなるほど、コストが大きくなる仕組みになっています。なお、上記において2%に相当する部分をエントリー、1%に相当する部分をリコールといいます(ここでの数値は説明上の一例である点に注意してください)。図表5 CBリパッケージ債の取引フロー:発行時図表6 CBリパッケージ債の取引フロー:満期時保有者)転換社債(CB)入門ファイナンス 2025 May. 73CBリパッケージ債を発行し、地銀が100円でその債券を購入します。(2)SPCは、その100円を原資に、CBをヘッジファンドから購入します。また、(3)ヘッジファンドは、20円のオプション料を支払うことで、好きなタイミングでCBを100円で買い直せるという契約(買い戻し条件権付CBの売却取引)を結びます。実務では、図表5のような形で、CBアセット・スワップと呼ばれるデリバティブ契約を結びます(コーラブル・アセット・スワップやコンバーティンブル・アセット・スワップとも呼ばれます)。アセット・スワップとは、債券とデリバティブのパッケージ取引ですが、CBアセット・スワップは、CBリパッケージ債を組成する上で用いられるアセット・スワップです(CBアセット・スワップの詳細は河合・糸田(2007)などを参照)。この経済性は、先ほど記載したとおり、「買い戻し条件権付CBの売却取引」に相当します。なお、図表5の右側では、ヘッジファンドがSPCにオプション料を支払う仕組みとして説明していますが、実務的には、この間に証券会社が入り、ヘッジファンドがオプション料を支払う主体は証券会社ですが、証券会社を捨象した簡略化された図になっている点に注意してください(以下でも、証券会社を捨象した説明を続けます。河合・糸田(2007)では、この図におけるヘッジファンド部分はスワップカウンター・パーティとして説明されています)。また、ここでは当初、ヘッジファンドがオプション料を支払う説明になっていますが、実務ではもう少し複雑なキャッシュフローになっています*15。権利行使されない場合ここまでがCBリパッケージ債の組成の話ですが、次に、CBリパッケージ債の満期におけるキャッシュフローについて説明します。CBリパッケージ債の場合、ヘッジファンドが権利行使をするかどうかでその経済性が異なります。ここから、まず権利行使しない場合を説明し、その後、権利行使した場合の説明をします。まず、もし株価が転換価格を上回らず、CBが株式に転換されなければ、ヘッジファンドは買い戻すオプションを権利行使しないので、満期にCBは100円で償還されます。このことは、CBの発行体がCBを持っているSPCに100円支払うことを意味するので、図表6のように、CBを保有しているSPCは、発行体から受け取る100円を用いて、リパッケージ債の保有者である地銀に100円払います(CBリパッケージ債は償還されます)。
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