SPOTCBCBSPC(1)地銀は100円支払うCBリパッケージ債SPCはリパッケージ債を発行(3)HFはオプション料を20円支払う(2)HFは100円受け取るCBリパッケージ債HFはCBを売却(注)実際には、SPCとヘッジファンドの間に証券会社が入りますが、証券会社を捨象した簡略化された図になっている点に 注意してください。(出所)筆者作成ヘッジファンド(HF)(オプション保有者) 72 ファイナンス 2025 May.*13) 「発展編」で説明したとおり、実際のCBには様々なオプションが含まれているため、満期前に償還される可能性もあります*14) 河合・糸田(2007)は「日本においてCBリパッケージ債が盛んである背景として、最終投資家とディーラーのそれぞれに事情があるものと考えられる。具体的には、オフバランスのデリバティブ取引に特有の事務や法務のインフラの不在や、カウンターパーティ・リスク枠の設置といった問題が挙げられる。また、投資に関する内規などで、株式の要素を含むCBを現物で保有することが認められない場合もあるようだ」(p.209)としています。図表4 CBリパッケージ債の取引のイメージ地銀(リパッケージ債保有者)価値に相当するイメージであり、A社が発行する社債に投資した時に得られる金利と比較して、有利であればこの取引に応じたいし、不利であれば取引に応じたくないと考えます。なお、この契約では、読者はいつでも買い戻せる契約にしているため(アメリカン・タイプのオプションであるため)、筆者からみると、満期にならず、読者の判断でいつでも100円で買い戻される可能性があります*13。したがって、筆者からみると、この取引は、事実上、発行体がいつでも100円で買い直せる社債を買っている場合の経済性と類似しています。このような満期前に償還される(期限前償還のある)オプションを内包している債券を「コーラブル債」というため、筆者にとってこの契約はコーラブル債を買っていると解釈されます。読者はオプション部分、筆者が社債部分を保有する形で、CBに内包するオプション部分と社債部分を分解することが可能になりました。これを実際に可能にするのがリパッケージ債です。リパッケージ債とは、ある有価証券をリパックして、新しいキャッシュフローに組み替える仕組みです。例えば、国債や社債などを特別目的会社(Special ニーに入れて、そのペーパーカンパニーが、金融機関と一定の契約(典型的にはデリバティブ)を結ぶことで、キャッシュフローを変換します。一般的に、デリバティブを内包する債券を仕組債ということから、リパッケージ債は仕組債といえます。特にCBをリパックする場合、CBリパッケージ債と呼ばれます。なぜSPCを用いるか先ほどのような相対契約でも、CBに内包されるオプションと債券部分を分解することができますが、例えば、筆者がデフォルトした時に、取引自体が継続できないリスクがあります*14。そのため、実際の取引では、SPCというペーパーカンパニーを立ち上げ、そのSPCが債券を発行する形を取り、筆者がデフォルトしたとしても、読者にその影響が及ばない仕組みを作っています(これを「倒産隔離」といいます)。また、前述のとおり、この取引は社債に類似した取引であるため、社債のように債券の形をとることにより、金融機関などの機関投資家にとって資金を出しやすくなる側面もあります。SPCは、海外の租税回避地であるケイマン諸島などに設立される傾向があります。発行時ここから、CBリパッケージ債を具体的に考えるため、ある企業がCBを発行したあと、そのオプション部分をヘッジファンドが保有し、残りの債券部分であるCBリパッケージ債を地銀が購入するケースを考えてみましょう。ここではある企業がCBを発行した後、まずはヘッジファンドがCBを購入したとします。図表4はその後にCBリパッケージ債を発行する(組成する)イメージを表しています。図表4の左側を見てほしいのですが、(1)SPCは、Purpose Company, SPC)と呼ばれるペーパーカンパ3.2 CBリパッケージ債の発行・期中・満期上記のように、買戻し条件を上手く用いることで、
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