SPOT (2)権利行使したいときに買い戻す読者CBCB(出所)筆者作成100円で買う100円で買い戻す(1)CBを売却オプション料(20円)を払う読者100円受け取る売却筆者筆者*12) 厳密にいえば社債に投資する場合、流動性リスクなどもとっていますが、ここでは簡単化のためクレジット・リスクのみ考えています。図表3 買い戻し条件を付けてCBを売却するイメージCB転換社債(CB)入門CBファイナンス 2025 May. 71戻す条件は、読者が権利行使したければ行使するという意味で、オプションと解釈される点に注意してください。筆者は、20円貰えるなら、ということで、この取引に応じたとします。読者の視点:オプション保有者上記の経済性に関して、読者からの視点と筆者からの視点で考えます(「発展編」でも議論しましたが、金融の取引では、両者の視点で考えることが大切です)。まず、オプションの保有者である読者の視点で考えますが、仮に、株価が上がり150円になったとしましょう。この場合、読者は先ほどのオプションを権利行使して、私から100円で買い戻します。そのうえで、CBを株式に転換し(1株を得ます)、150円でマーケットで売れば、50円の利益が得られます(オプション料20円も考慮すれば30円の利益です)。一方、もし株価が低下し、50円になったとしましょう。この場合、株式に転換するメリットがないため、読者は買い戻す権利を行使しません(オプション料を除けば利益はゼロです)。したがって、株価が上がれば(オプション料である20円を除くと)利益が上がり、逆に株価が下がれば利益はゼロになるため、この取引は、事実上、A社のオプションを買っていることと同じであることが分かります。大切なのは、仮にA社がデフォルトした場合です。ここでは一定確率でデフォルトすると想定しましたが、もしA社がデフォルトして、CBの価値がゼロになったとしても、このCBを持っているのは筆者です。CBによる損失は筆者が負い、読者は損失を被らないことになります。したがって、読者はこの取引において、A社のクレジット・リスクを負っていないということがわかります。筆者の視点:社債保有者次に、この取引に関し、筆者の視点から考えてみましょう。筆者は、当初、読者に100円を支払って、CBを保有します。筆者は、読者から20円のオプション料を貰える一方で、もし読者が権利行使をしたらCBを100円で読者に売る必要があります。まず、このCBはクーポンが支払われないので、CBからのクーポン収入はありませんが、先ほど説明した通り、私は読者から20円のオプション料がもらえます。もし読者が権利行使しなければ、筆者はCBを満期まで持ち切って満期時に100円を得ます(発行体Aから100円が支払われます)。もし読者が満期前に権利行使したら、読者が私に100円を支払うので、期限前に100円で償還されることになります。大切な点は、A社が倒産したら、CBの価値はゼロになるので、筆者はCBを100円で購入しても1円も戻ってこないという形で、クレジット・リスクを負うことになります。もっとも、そもそも100円出して社債に投資した場合、当該企業がデフォルトすれば元本が棄損するという意味で、両者は同じともいえます。社債に投資して(国債の金利以上に)金利が得られる理由は、社債を発行する企業のクレジット・リスクをとるからといえます*12。したがって、この取引でもA社がデフォルトしたら、筆者からみれば、100円は返済されません。これは、筆者が、通常の社債を買うように、クレジット・リスクをとっているということが確認できます。筆者としては、この取引で受け取れるオプション料は、社債に投資することにより将来得られるクーポンの現在
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