SPOTす*8。まず、読者がCBに内包されるオプションを購入 68 ファイナンス 2025 May.*7) 例えば、ぺデルセン(2018)を参照。*8) ここでは、通常のオプションのガンマ・トレーディングの説明をします。その理由として、前述のとおり、日本企業が発行するCBについては、CBに内包されるオプションのみにヘッジファンドなどが投資することが少なくないことが挙げられます。また、オプションに絞った説明の方が説明がコンパクトになり、この知識があれば社債部分も含んだCBのガンマ・トレーディングも容易に理解できることも挙げられます(例えば、ぺデルセン(2018)ではCBの債券部分も明示的に含んだ説明をしているため、同書を参照してください)。2.4 ガンマ・トレーディング(CBリパッケージ債は、CBに内包される社債部分をデフォルトすれば、読者が有するCBの元本が棄損することになります。このように、デフォルトにより元本が棄損するリスクをクレジット・リスク(信用リスク)といいますが、CBは社債とオプションのセット商品なので、CBに投資するということは、同時にクレジット・リスクも負うことになります。読者は、このようなクレジット・リスクは負いたくないと考えており、前述のオプションを持つことから生まれる経済性だけに関心があるとしましょう。もし、CBに内包される社債部分とオプション部分を分解することができれば、読者はオプション部分にだけ投資することが可能になります。これを可能にする金融技術が「CBリパッケージ債」と呼ばれる債券です投資家が債券として購入できるようにした金融商品です)。事実、CBが発行されるタイミングで、オプション部分についてはヘッジファンドなど海外の投資家に購入され、その残り部分についてはCBリパッケージ債が発行され、銀行などに販売されることも少なくありません。次節では、どのような金融技術を用いて、CBに内在されるオプションと社債を分解するかについて議論をしますが、その前に、CBへ投資をする投資家のオプション・トレーディングについて簡単に触れておきます。CBに内包されるオプションに投資する際には、様々なトレーディング手法がありますが、典型的なトレーディング方法はガンマ・トレーディングです。実務家の資料や金融のテキスト*7でも、ガンマ・トレーディングは、CBのトレーディングに関する代表例として説明されます。面白い点は、ガンマ・トレーディングによりボラティリティを収益化することが可能になり、CBが仮に株式に転換されなかったとしても、CBの投資家は利益を上げられる可能性がある点です。重要なポイントは、CBに内包されるオプションのボラティリティ(インプライド・ボラティリティ)に比べ、価格の変動がより大きければ、利益を上げられる点です。「発展編」で説明したとおり、CBの発行体は、クーポンを抑える代わりに新株予約権(オプション)を売却しており、CBに内在されるオプションの価値が割安であれば投資家に有利な条件ですし、割高であれば発行体にとって有利といえます。一方、CBに内包されるボラティリティが割安か割高であるかの実際の評価はそれほど簡単ではありません。そもそもある金融商品の取引が存在するのは、マーケットに対するビューが違う(この例でいえば、どれくらい株価が変動するかについての見通しが違う)からともいえます。ガンマ・トレーディングのイメージCBのオプションを保有しているヘッジファンドは典型的にガンマ・トレーディングを行っているとしましたが、その厳密な説明や詳細はオプションの本に譲り、ここではその直感的なイメージだけを説明しましたとします。読者はオプションを保有していることにより、一定のリスクを有していますが、ガンマ・トレーディングのポイントは、このリスクをヘッジすることでボラティリティを収益化する点です。そもそもデリバティブのリスク管理では、株(原資産)の価格が動いたときに、どの程度オプションの価格が動くかなどの感応度(センシティビティ)を用います。例えば、オプションのリスク量は、株価が変化した時に、どれくらい読者が保有するオプションの価格が動くかという形で測られ、これを「デルタ」といいます。また、株価が変化した時にどれくらいリスク量であるデルタが動くかを「ガンマ」といいます。オプションのリスク指標は、デルタやガンマなどギリシャ語を使うことから、「グリークス」と呼ばれることもあります。デルタという観点でいえば、読者が保有するオプションのリスク量(デルタ)がゼロになるよう、(原資産である)株式を売却すれば、リスク量をゼロ(デルタをニュートラル)にすることができます。読者に
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