2-2.基礎控除の特例の創設2-1. 物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整への対応令和7年度税制改正(国税)等について令和7年度予算特集:4特 集 ファイナンス 2025 May. 3地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充するとともに、国際環境の変化等に対応し、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置や外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行う。さらに、政党間協議や国会質疑を踏まえ、衆議院修正として、低所得者層の税負担に対して配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、基礎控除の特例を創設した。具体的な改正内容等は、2―1.~11.のとおりである。所得税については、基礎控除の額が定額であることにより、物価が上昇すると実質的な税負担が増えるという課題がある。わが国経済は長きにわたり、デフレの状態が続いてきたため、こうした問題が顕在化することはなかったが、足元では物価が上昇傾向にある。一般に指標とされる消費者物価指数(総合)は、最後に基礎控除の引上げが行われた平成7年から令和5年にかけて10%程度上昇し、令和6年も10月までに3%程度上昇しており、今後も一定の上昇が見込まれる。また、生活必需品を多く含む基礎的支出項目の消費者物価は平成7年から令和5年にかけて20%程度上昇している。こうした物価動向を踏まえ、所得税の基礎控除の額を現行の最高48万円から最高58万円に10万円、20%程度引き上げる。(資料1)給与所得控除については、給与収入に対する割合に基づき計算される控除であり、物価の上昇とともに賃金が上昇すれば、控除額も増加する。しかしながら、最低保障額が適用される収入である場合、収入が増えても控除額は増加しない構造であるため、物価上昇への対応とともに、就業調整にも対応するとの観点から、最低保障額を現行の55万円から65万円に10万円引き上げる。(資料2)また、現下の厳しい人手不足の状況において、特に大学生のアルバイトの就業調整について、税制が一因となっているとの指摘がある。このため、19歳から22歳までの大学生年代の子等の合計所得金額が85万円(給与収入150万円に相当)までは、親等が特定扶養控除と同額(63万円)の所得控除を受けられ、また、大学生年代の子等の合計所得金額が85万円を超えた場合でも親等が受けられる控除の額が段階的に逓減する仕組みを導入する。(資料3)以上については、源泉徴収義務者の負担にも配慮しつつ、令和7年12月の年末調整から適用する。なお、「令和7年度税制改正大綱」において、上記の所得税の見直し等については、『デフレからの脱却局面に鑑み、基礎控除や給与所得控除の最低保障額が定額であることに対して物価調整を行うものであることを踏まえて、特段の財源確保措置を要しないものと整理する。仮に今後、これを超える恒久的な見直しが行われる場合の財政影響分については、歳入・歳出両面の取組みにより、必要な安定財源を追加的に確保するための措置を講ずるものとする』とされている。低所得者層の税負担に対して配慮する観点や、物価上昇に賃金上昇が追いついていない状況を踏まえ、中所得者層を含めて税負担を軽減する観点から、所得税の基礎控除の特例を創設する。具体的には、・ 低所得者層の税負担に対して配慮する観点から、生活環境の厳しい最低賃金程度の給与収入200万円相当以下の者に対し、基礎控除の特例として、37万円の恒久的な上乗せを行う。これにより、課税最低限が160万円となり、東京都23区の生活保護基準を超える水準となる。・ 物価上昇に賃金上昇が追い付いていない状況の下、物価上昇局面において幅広い収入階層の世帯で家計負担が増加していることに鑑み、給与収入200万円相当超850万円相当以下の者に対し、令和7年及び令和8年の措置として、基礎控除の特例として、上乗せ措置を設ける。またその際、高所得者優遇とならぬよう、政府原案と修正案を併せて、それぞれの収入階層での減税額が平準化されるようにしている。これらの措置の対象者は納税者全体の8割をカバーし、幅広い世帯に減税額の上乗せがあるものとなっている。(資料4)
元のページ ../index.html#7