ファイナンス 2025年5月号 No.714
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※三SPOT *14) 国会に提出される法律案等の製造においても誤植等のミスはほぼ皆無であり、各省庁は国立印刷局とのシステム連携等に取り組んでいる。*15) 厳密には、国内のインターネット環境が未整備だった平成7年(1995年)から、官報や政府調達公告のデジタルデータの配信を開始していた。また、インターネット版官報(副本)は、「行政手続における官報情報を記録した電磁的記録の活用について」(令和5年1月27日閣議了解)によって紙官報との同一性が保証されたのち、今般の法整備によってデジタル官報(正本)そのものとなった。*16) かつて大正12(1923)年9月1日の関東大震災の折には、大手町にあった印刷局の庁舎・工場が倒壊・損壊した中、手書きの謄写版(ガリ版刷り)で官報号外「非常徴収発令」を作成・頒布した。国立印刷局法の一部改正(官報電子化とベース・レジストリ)によるデジタルシフト改正箇所←【追加】←【追加】(業務の範囲)第11条第1項印刷局は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。一銀行券の製造を行うこと。二銀行券に対する国民の信頼を維持するために必要な情報の提供を行うこと。官報の原稿の作成並びに(官報法に規定する)電磁的官報記録を記載した書面及び書面官報の印刷を行うこと。四 (略)五国の行政機関等の委託を受けて、国の公的基礎情報データベースを構成するデータの加工、記録、保存及び提供を行うこと。六情報通信技術活用法第二十条第二項の規定による(第5号に関する技術的助言、情報の提要その他の必要な)協力を行うこと。七~九 (略)←【官報の編集、印刷及び普及 】ファイナンス 2025 May. 61官報の発行に十全を期すには、公私に跨がる多数の入稿者と常に原稿を調整し、校了された情報を正確かつ確実に形にする技術と態勢が欠かせない。この点、国立印刷局の業務実績はその所在の確かな証左となっている*14。また、官報情報のデジタライゼーションは国立印刷局が昭和63年(1988年)に着手し、平成11年(1999年)には官報の副本(正本である紙官報の付属物)として一早く「インターネット版官報」を配信*15。平成13年(2001年)には附帯業務として「官報情報検索サービス」を実装・改修して、官報の周知性を補完してきた。さらに、印刷局法第20条に基づく内閣総理大臣からの緊急要請に対する応諾義務を果たすため、365日24時間体制のBCP(災害等緊急時の特別号外の発行と頒布*16)も確立されている。これら国立印刷局が日々連綿と構築し、かつ有効に機能させてきたノウハウは、新たな官報法の枠組みでも十分に活用されるのが至極合理的である。また、法令の公布や企業の決算公告など、国家・経済の信用に関わる情報そのものと言える「官報の原稿」の取扱いには、高い秘密保全や正確性が求められる。これらを契約で担保することも考え得るが、「国の公報」が正しく発行されないことの社会的不利益は、民事的な金銭補償で埋めがたいものがある。そのため官報に関する事務は、争議行為の禁止や守秘義務が課される行政執行法人、とりわけ長年の実績を有する国立印刷局が継続的に実施するのが適当であり、政府の「官報電子化検討会議」はそのように結論している。こうした一連の観点を踏まえて、引き続き法定独占事業にしないまま、国立印刷局が内閣総理大臣(内閣府)の指示・委託に応えて官報制度を支えていける規定ぶりとしている。【ベース・レジストリの整備及び改善】に関する規定ぶりはどうか。こちらは完全な新規業務となるので、第11条第1項に新5号及び新6号を追加している。具

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