ファイナンス 2025年5月号 No.714
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※SPOTい*12。無論、多岐にわたる独法業務の逐一を全て法律 60 ファイナンス 2025 May.*11) 業務の記述を第3条から第11条に譲る抜本的改正も検討されたが、通則法の下に置かれる個別法という位置づけに鑑み、他の各独法の規定ぶりとの*12) 違反した場合、印刷局法第23条第2項に基づき、役員は20万円以下の過料に処される。*13) インターネット等の情報通信技術(ICT)の利用・アクセスの格差。総務省「情報通信白書」及びデジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」平仄を優先した。参照。(2)業務の範囲の変更(第11条・第20条関係)改正箇所←【追加】(印刷局の目的)第3条第2項印刷局は、前項に規定するもののほか、官報の原稿の作成白書、調査統計資料その他の刊行物の編集、印刷、刊行及び普及並びに国の公的基礎情報データベースを構成するデータの加工、記録、保存及び提供を行うこと等により公共上の見地から行われることが適当な情報の提供を図るとともに国債証券、印紙、郵便切手その他の公共上の見地から必要な証券及び印刷物の製造を行うこと等によりその確実な提供を図ることを目的とする。←【官報の編集、印刷及び普及 】条第1項が列挙する各業務を銀行券(紙幣)とそれ以外の二つに大別し、後者に括られる業務の主なものを第2項に(非常に冗長な文言で)記述している*11。本条の改正点は、こうした目的達成のための手段である業務の記述部分に尽きており、「公共上の見地から行われることが適当な情報の提供を図る」という政策目的そのものに変更はない。独法制度は、組織・業務の膨張抑制(民業圧迫回避)を重要な観点としている。「中央省庁等改革基本法」(平成10年法律第103号)第37条第2項を受けて、通則法第27条は、「各独立行政法人の業務の範囲は、個別法で定める」と規定している。印刷局法の場合、第11条が個々の業務を明定しており、同条で具体的に授権されていない業務行為を行うことはできなに規定するのは非現実的であるから、他独法の個別法と同じく、主務省による解釈と監督が重要となる。【官報の電子化】に関しては、官報法による制度の再定義をベースに、国立印刷局が行う業務の態様に即した規定ぶりとしている。具体的には、印刷局法第11条第1項第3号及び第20条第2項で用いていた「官報の編集、印刷及び普及」の文言が、「官報の原稿の作成」並びに「電磁的官報記録を記載した書面及び書面官報の印刷」と改められた。前者がデジタルデータ(の作成)を、後者が紙媒体(の印刷)を成果物とする規定である。なぜこういった文言修正になるのか。官報法の成立・施行に伴い、官報の正本は紙とインクによって製造される「印刷」物ではなくなり、これに代わって、改ざん防止等の措置を施されたデジタルデータがインターネットを介して頒布(=発行)される(第4条・第5条)。他方で、法令等の公布手段であるという官報の公益性に鑑み、デジタル・ディバイドの問題*13や災害・通信障害等に備えて、紙媒体による公報手段が別途確保される(第10条・第11条・第14条)。そして、これらを実現するための「編集」権限と「普及」の責任は、発行主体と法定された内閣総理大臣が一元的に有することになる(第2条)。さながら官報制度に国立印刷局の出る幕は無くなってしまうように映るが、果たしてそうではない。

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