ファイナンス 2025年5月号 No.714
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特 集1.令和7年度税制改正の基本的考え方等 2 ファイナンス 2025 May.*1) 「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」(令和6年11月22日閣議決定)においては、『いわゆる「103万円の壁」については、令和7年度税制改正の中で議論し引き上げる。また、「ガソリン減税(いわゆる暫定税率の廃止を含む)」については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を得る。これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得る』とされた。*2) 与党修正案に盛り込まれた基礎控除の特例の創設による令和7年度の減収額は6,210億円であり、これらが反映された令和7年度予算の修正案も、与*3) 3月3日、自由民主党・公明党・日本維新の会の3党の幹事長間で、『Ⅰ.自由民主党、公明党は、いわゆる「103万円の壁」への対応をはじめ、政党間協義について、令和7年度税制改正大綱(令和6年12月20日自由民主党、公明党)に記載されている「引き続き、真□に協議を行っていく」との姿勢を変えることなく、今後とも誠実に対応する。Ⅱ.上記Ⅰを前提に、自由民主党、公明党の令和7年度予算及び令和7年度税制改正法の修正案について、年度内の早期に成立させる』ことが合意された。これを受けて、自由民主党・公明党・日本維新の会の3党が政府原案及び与党修正案に賛成した。党修正案と同様2月28日に与党から衆議院に提出された。令和7年度税制改正大綱において、いわゆる「103万円の壁」等について、『自由民主党・公明党としては、引き続き、真摯に協議を行っていく。』とされたこともあり、3党の協議が2月18日に再開された。4回にわたる協議で合意は得られなかったものの、協議において与党から提示した更なる対応案を踏まえ、2月28日に自由民主党・公明党において「基礎控除の特例の創設について」が決定され、同日、政府原案に対する修正案が与党から衆議院へ提出された(以下、与党修正案)*2。その後、3月4日に政府原案及び与党修正案が衆議院を通過し(以下、衆議院修正)*3、3月31日に衆議院修正が反映された上で可決・成立した。本稿においては、令和7年3月31日に成立した令和7年度税制改正法に関する内容を中心に説明する。なお、文中意見等にわたる部分は、筆者の個人的見解である。令和7年度税制改正においては、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応するための項目を盛り込んでいる。具体的には、物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除等の見直し及び大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行うほか、成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し令和7年度税制改正においては、例年の各省庁からの税制改正要望を踏まえた政府部内の議論、自由民主党・公明党の与党税制調査会における議論に加えて、自由民主党・公明党・国民民主党の3党による協議が行われた。昨年末に税制改正大綱が決定され、政府が法案を提出した後も、3党の協議は継続され、国会での議論も踏まえ、衆議院における法案修正を経て成立するという、近年にない経過をたどった。具体的には、3党の協議は、令和6年11月20日以来、特にいわゆる「103万円の壁」「ガソリンの暫定税率」について議論が行われた*1。12月11日には3党の幹事長間で、『一、いわゆる「103万円の壁」は、国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる。一、いわゆる「ガソリンの暫定税率」は、廃止する。上記の各項目の具体的な実施方法等については、引き続き関係者間で誠実に協議を進める』ことが合意された。3党の協議は、年内は12月17日まで6回実施されたが、合意には至らず、自由民主党・公明党は与党として、12月20日に「令和7年度税制改正大綱」を決定した。政府は、同年12月27日に「令和7年度税制改正の大綱」を閣議決定し、令和7年2月4日に所得税法等の一部を改正する法律案(以下、政府原案)を国会に提出した。令和7年度 税制改正(国税)等について主税局総務課 税制企画室長 島谷 和孝

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