ファイナンス 2025年5月号 No.714
57/112

投資不明(%)32SPOT 設備投資比率(%)420232022202120202029102710281026102510241023102210211020102900280026002700250024002設備投資比率設備不明中堅企業1,7862,9046,02220,13640302010中小企業138,188731,7572.51.5大企業製造業非製造業※  2024年1-3月期調査における値を掲載。なお、掲載した数値は、金融業、保険業を含まない値である。図3  設備投資比率と投資不明(翌々期末)の推移(全産業、大企表1 法企調査における業種・規模別母集団数*8) 予測調査は、金融業、保険業を除く結果を公表していない。一方、法企調査において、金融業、保険業の調査が開始されたのは、2008年度(平成20年度)からである。このため、法企調査については、業種範囲が変わることによる結果への影響に配慮し、金融業、保険業を除く結果を利用した。法企調査と予測調査で、業種範囲を□えた分析を行うことは、今後の検討課題である。業)、後方4期移動平均企業の主観的不確実性と設備投資ファイナンス 2025 May. 53〈分析に利用したデータ〉4 分析結果(単位:社)本稿の分析では、法企調査及び予測調査の公表結果から、業態×資本金規模別の疑似パネルデータを作成し、固定効果モデルによるパネルデータ分析を実施した。なお、第2節で述べたとおり、本研究では、個票データではなく、上記2つの調査の公表結果を利用している。分析に利用したデータ及びその取扱いは、以下のとおりである。分析モデルについては、「付録 設備投資関数」を参照されたい。法企調査及び予測調査の公表結果から、「製造業、非製造業」×資本金規模別の擬似的パネルデータを作成した。ここで、資本金規模は、大企業(資本金10億円以上)、中堅企業(資本金1億円以上10億円未満)、中小企業(資本金1億円未満)の3区分とした。利用したデータは、以下のとおりである。なお、予測調査は金融業、保険業を含む結果であるのに対し、法企調査は金融業、保険業を除く結果を利用した*8。参考として、表1に、業態×規模別の法企調査母集団数を掲載する。◆ 法人企業統計調査四半期別結果(2004年4-6月期結果~2024年1-3月期結果)◆ 法人企業景気予測調査(2004年4-6月期結果~2024年4-6月期結果)最初に基本モデル(モデル式1)の推定結果について述べる。表2~4に、モデル式1の推定結果を掲載する。各表は、それぞれ、自社不明、国内不明、設備不明を不確実性指標としたモデルの推定結果である。なお、表2~5に掲載したwithin R2は、時間ダミーを含む参考値であることに注意する。また、本稿では不確実性指標の推定結果を中心に記述する。全般的に、いずれもモデルの当てはまりは比較的良好であり、資本コスト(ただし翌期では符号が理論と異なり正となった)と現金・預金比率の説明力が弱いことを除けば他の財務指標については概ね有意である。また、自社不明、国内不明及び設備不明いずれの結果も、翌々期の不確実性指標の符号は負で有意となっている。以上のとおり、翌期を不確実性指標とした分析では、期待した結果は得られなかったものの、翌々期を不確実性指標とした分析では、先行きの不確実性が企業の設備投資を抑制する傾向があるという、Morikawa(2018)及び森川(2022)の結果を支持する結果が得られた。一方、不確実性指標が設備投資に及ぼす影響は、業種や企業規模によって異なる可能性が考えられる。例えば長期的な観点からの投資が多い企業は短期の不確実性の増減には影響されにくいかもしれない。そこで次に、業種・規模による不確実性の影響の違いを考慮したモデル(モデル式2)による推定を行った(表5)。ここでは、自社不明及び設備不明の翌々期のみを不確実性指標として用いた結果を示すが、国内不明でも同様の結果が得られている。なお、「自社_2」は自社不明を、「設備_2」は設備不明を不確実性指標とした結果である。モデル式1と同様に、いずれも説明力は高い。不確実性指標の推定結果をみると、ベースラインである非製造業・中小企業の不確実性指標の係数は符号が正となったが有意ではなく、他の部門に関しては符号が負で、非製造業・中堅企業を除くとベースラインより大きい値となった。また、大企業を除くと非製造業に比して製造業の係数が大きくなってい

元のページ  ../index.html#57

このブックを見る