SPOT③クーポン④-2償還②債券購入投資家①保険料④-1保険金 42 ファイナンス 2025 May.CATボンド(Catastrophe Bond)は、地震や台風等の大規模自然災害リスクを資本市場に移転する金融商品CATボンドに係るステークホルダーには、まず、スポンサー(被保険者)として、(再)保険会社、一般企業、政府機関等の災害リスクを移転したい主体が存在する。次に保険者(発行体)として、通常は特別目的事業体(SPV)がスポンサーと投資家の仲介役を果たす。そして投資家として、ヘッジファンド、CATボンド専門ファンド、(再)保険会社、年金基金等が参加する。CATボンドの支払いが発生する条件(トリガー)には主に3種類ある。第一に「実損填補型」は、スポンサーの実際の損失額に基づくものである。第二に「業界損失指数型」は、保険業界全体の損失が特定の閾値を超えたであり、伝統的な保険や再保険を補完・代替する手段として、1990年代から発展してきた。図1:CATボンドの仕組み基本的な仕組みとしては、まずスポンサーがSPVと(再)保険契約を結び、保険料を支払う。次にSPVは投資家向けにCATボンドを発行して資金を調達し、安全資産で運用する。スポンサーから支払われる保険料と資産の運用収益を原資としてクーポンが払われる。契約期間中に指定のトリガーイベントが発生した場合、元本の一部または全部がスポンサーへの保険金支払いに充てられる。発生しない場合は、満期時に投資家に対して元本が償還される。場合に支払うものである。第三に「パラメトリック型」は、地震のマグニチュードや風速等、客観的な物理的指標に基づくものである。(3)PCRAFIの実績(4)アジア開発銀行(ADB)を通じた新たな支援PCRICの2026-2030年のビジネスプランでは、保おわりに:今後の展望1週間で120万ドルの保険金が支払われた。パイロッ2週間以内の迅速な支払いを実現しており、被災国政「豊かで強靭なアジア太平洋日本基金(JFPR)」の資2024年12月のバヌアツ地震では、発生からわずかトプログラムを含む、これまでの支払実績は6件、総額1,240万ドルに達している。いずれも災害発生から府による災害直後の緊急対応と初期復旧活動に貢献している。険契約を太平洋島嶼国全14ヵ国に拡大することを目指している。日本財務省は、PCRICの保険引受能力拡大や、太平洋島嶼国の災害リスクに対する認識向上・知識醸成の支援のため、2025年4月にADBのスポンサー(被保険者)金を活用した技術支援を開始。さらに、ADB内へのPCRAFIに特化したマルチドナー信託基金の設立に向けた議論を主導している。自然災害がますます激甚化・頻発化する中、SEADRIFとPCRAFIは、メンバー国を増加させるとともに、リスク評価の精緻化や保険商品の多様化を図っていく。日本は、これまで培った経験と知見を活かし、引き続きこれらの取組においてリーダーシップを発揮することで、アジア太平洋地域の財務強靭性向上を支援していく。また、DRFの新たな選択肢としては、CATボンド(下記コラム参照)の活用も注目を集めている。伝統的な保険制度では対応が難しい大規模災害リスクの効率的な移転の観点から、長期的にはCATボンド市場の育成も視野に入れて取り組んでいく。SPV(発行体)コラム:アジア太平洋地域におけるCATボンド市場の可能性1.CATボンドの概要
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