SPOT *2) それぞれ、ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁代理会議(代理会議)、ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議(大臣会議)*3) チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)、ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス(AMRO)、アジア債券市場育成イニシアティブ(ABMI)に続く「第4の柱」となった。アジア太平洋地域における災害リスクファイナンス(DRF)の展開ファイナンス 2025 May. 41(2)SEADRIFの成果と展開(3)ASEAN+3 DRFイニシアティブの展開2021年3月のASEAN+3代理会議*2にて、災害リ(4)次期ロードマップに向けた展望(1)パイロットから本格展開へ(2)飛躍的な発展3.PCRAFI - 災害保険提供の多角化SEADRIFの制度構築をリードし、資金提供を通じてその発展を支えてきた。SEADRIFの具体的な成果として、2021年2月に開始されたラオス向け自然災害保険がある。これは主に洪水リスクを補償するもので、2023年8月の熱帯暴風雨、2024年9月の台風ヤギによる被害の際には、わずか3~5営業日で総額450万ドルの保険金が支払われた。また、SEADRIFは2019年末から中所得国における公共施設やインフラ資産の財政的保護にも取り組んでおり、2024年7月からはフィリピン政府の国家実損填補型保険プログラム(NIIP)の対象拡大に向けた支援等を検討している。スクに対する財務強靱性向上を目指すワーキンググループが設置され、日本がその議論を主導した。2023年5月のASEAN+3大臣会議*2では、DRFがASEAN+3の金融協力の「第4の柱」*3として正式に位置づけられ、「DRFイニシアティブ」として新たな枠組みが構築された。本イニシアティブは、ASEAN+3におけるDRFの方向性について議論を行い、SEADRIFや世銀等の既存の取組を活用し、各国のDRF関連の取組を推進することを目的としたプラットフォームである。また、同会議では上記の道筋を示す「DRFイニシアティブに係るアクションプラン 2023-2025」が承認され、2024年8月には河合美宏氏を事務局長とする「DRFイニシアティブ事務局」が発足した。ASEAN+3の財務トラックに参加している各国財務省や中央銀行の多くは、災害リスク管理や保険に馴染みが薄い。一方で、各国政府向けの自然災害保険の取組を進めるには、保険料に充てる予算措置のために各国財務省の理解・協力が不可欠。日本はこの課題に向き合い、各国と協働して次期3ヵ年のロードマップ(2026-2028)の策定を進めている。2025年4月のASEAN+3代理会議では、各国財務省が所管する政策・制度を対象とした支援枠組みについて大枠の合意を得ており、1)国際開発金融機関等の知見を活用した基礎的DRFツールの保有と発展的ツールの基盤整備に向けた支援、2)SEADRIFによる各国ニーズに合わせた保険商品拡充、3)保険商品以外のオプションの検討の3つの取組を2026年以降に展開していく予定である。PCRAFIは、太平洋島嶼国における自然災害からの復旧・復興を支援する保険の仕組み。2006年に太平洋島嶼国の財務大臣が世界銀行・IMF年次総会において支援の仕組みの検討を要請したことが契機となり、2009年の第5回太平洋・島サミットにおける日本の提案から、2013年に世界銀行のパイロットプログラムが始動した。日本は当初唯一のドナー国としてプログラム立上げを支援し、その後、ドイツ、英国、米国、カナダが支援国として参加。2016年には、本格的なファシリティとしてクック諸島に「太平洋災害リスク保険会社(PCRIC)」が設立された。2020年にPCRICの現任CEOであるアホロトゥ・パル氏が就任してから、保険によるカバー人口は就任前の100万人から1,300万人へと飛躍的に拡大。2025年4月時点で、クック諸島、フィジー、ニウエ、パプアニューギニア、サモア、トンガ、バヌアツの7ヵ国がPCRICと保険契約を結んでおり、補償総額は5,300万ドルに上る。対象リスクも、当初の地震・津波、サイクロンに加えて、豪雨、サンゴ礁や通信インフラ保護と多様化が進んでいる。
元のページ ../index.html#45