ファイナンス 2025年5月号 No.714
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特 集7. 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置8.新たな国際課税ルールへの対応9.外国人旅行者向け免税制度の見直し10.電子帳簿等保存制度の見直し 12 ファイナンス 2025 May.わが国の防衛力の抜本的な強化を行うために安定的な財源を確保するという観点から、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について、「令和5年度税制改正の大綱」等の基本的方向性により検討した結果、以下の措置を講ずる。・ 法人税額に対し、税率4%の新たな付加税として、防衛特別法人税を課す。防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用する。中小企業に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円を控除する。この結果、中小企業では所得2,400万円程度まで防衛特別法人税が課されないこととなり、全法人の94%が対象外となる見込みである。・ 加熱式たばこについて、紙巻たばことの間の税負担差を解消するため、課税方式の適正化を行う。具体的には、価格要素を廃止し、重量のみに応じて紙巻たばこに換算する方式とするほか、軽量化による税負担の不公平が生じないよう、一定の重量以下のものは紙巻たばこ1本として課税する仕組みとする。こうした見直しは、消費者への影響に鑑み、2段階で、令和8年4月及び同年10月に実施する。その上で、国のたばこ税率を、3段階で、令和9年4月、令和10年4月及び令和11年4月にそれぞれ0.5円/1本ずつ引き上げる。なお、所得税については「令和7年度税制改正大綱」において、『令和5年度税制改正大綱等の基本的方向性を踏まえ』、『引き続き検討する』とされている。BEPS(BaseErosionandProfitShifting:税源浸食と利益移転)プロジェクトの立上げ時から国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたわが国にとって、令和3年10月にOECD/G20「BEPS包摂的枠組み」で取りまとめられた、経済のデジタル化に伴う課税上の課題への解決策に関する国際合意(「2本の柱」の解決策)の実施に向けた取組みを進めることは重要である。このうち、グローバル・ミニマム課税(「第2の柱」)については、わが国企業の国際競争力の維持及び向上につながるものであり、令和7年度税制改正においても国際合意に則り、軽課税所得ルール(UTPR:UndertaxedProfitsRule)及び国内ミニマム課税(QDMTT:QualifiedDomesticMinimumTop-upTax)の法制化をし、この結果、グローバル・ミニマム課税の導入が完了した。適用開始時期は、対象企業の準備期間を確保する観点等から、いずれも令和8年4月以後に開始する対象会計年度とする。(資料13)消費税の外国人旅行者向け免税制度については、不正利用を排除し、免税店が不正の排除のために負担を負うことのない制度とするため、令和6年度税制改正の大綱で示された方針を踏まえ、出国時に持ち出しが確認された場合に免税販売が成立する制度とし、確認後に免税店から外国人旅行者に消費税相当額を返金するリファンド方式に見直す。(資料14)その上で、本免税制度を引き続きインバウンド消費の拡大に向けた重要な政策ツールとして活用するため、外国人旅行者の利便性向上や免税店の事務負担軽減の観点から、一般物品と消耗品の区分や消耗品の購入上限額及び特殊包装を廃止するとともに、免税店が販売する際に「通常生活の用に供するもの」であるか否かの判断を不要とする等の措置を講ずる。(資料15)経済社会のデジタル化に伴い、事業経営や取引・財務に関する情報処理、経済の分野でもデジタル化が進展しており、納税者が簡便かつ適正に申告・納付を行うことができるよう、税務手続のデジタル化を推進する必要がある。このため、取引に係るやり取りから会計・税務までのデジタル化に対応する観点から、国税庁長官が定める基準に適合するシステムを使用した上で、一定の要件を満たして送受信・保存が行われている電子取引データについては、電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為に重加算税の割合を10%加重する措置の対象から除外する措置を講じ、令和9年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用する。

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