連載各地の話題 南加賀九谷焼小松うどん繊維産業九谷焼小松うどん塩焼きそばファイナンス 2025 May. 101日本海側の気候区分に属する南加賀は、多雨多雪地帯であり、白山山系を源とする手取川の豊富な水量や梯川(かけはしかわ)の清流が日本海へと注ぎます。この1年を通して湿潤な気候、豊富な水資源といった繊維織物製造にとって最高の条件に恵まれ、古くから絹織物が育まれ、栄えてきました。その後、時代の変化に対応して、ナイロン、ポリエステル繊維等の合成繊維織物やニット等へと製品の多様化を図り、近年では、衣料分野のほか、航空機や産業分野の構造材料などの炭素繊維での市場開拓を進めており、衣料分野特化からの変化を図っています。令和7年2月の日米首脳会談にあわせて石破総理大臣からアメリカのトランプ大統領に九谷焼の花瓶が贈られました。九谷焼は陶石と言われる石の粉を原料にした磁器ですが、江戸時代初期に、大聖寺藩主前田利治(加賀藩3代藩主前田利常の三男)の命を受けて有田で製陶を学んだ後藤才次郎が、江沼郡九谷村(現加賀市)で窯を築いたのが始まりとされています。五彩で描いた美しく、力強い大胆な色絵は「古九谷」と呼ばれ、世界的に高い評価を受けています。この「古九谷」は、約50年で姿を消してしまいますが、それから約100年後、加賀藩が京都から陶工青木木米を招き、九谷焼の復興を始め、金沢の春日山窯や小松の若杉窯など、数多くの窯が林立して現在に至ります。その伝統は今日にも脈々と受け継がれており、最近では色も九谷五彩にとらわれず、図柄も花鳥山水ばかりでなく、モダンアート風のものまでその画風は多岐にわたり新しい美の可能性を広げようとしています。その昔、松尾芭蕉も好んだという記録が残る小松うどんは、細目で程よくコシがある麺と魚の節や昆布を使ったあっさり味のダシが特徴です。麺は小松市内で製造されたもの、仕込みは白山水系の水を使うなど、小松うどん定義八か条を満たした七十数店舗が店ごとに工夫を凝らしたうどんを提供しており、中でも肉うどんがおすすめです。65年前に一軒のお店から始まった塩焼きそばは、その店の店主が、小松にはない美味しい料理を求めて、日本全土を旅して回り、そうして出会った「チャーメン」という中国の炒めそばを基に更なる美味しさを追求して誕生したそうです。太麺にたっぷりの野菜とこってりとした絶妙の塩加減がクセとなり、小松市民のソウルフードとして愛されています。
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