0□□□□□コラム連載海外経済の 潮流□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□(前年比□)□□□□▲□201620172018201920202021202220232024(百万ドル)60504030201020142015(出所)FRB(出所)米労働省上位□%:□□□□□万ドル下位□□%:□□□万ドル総合食品住居費□月(前年比)・総合□+□□□□・食品□+□□□□・住居費□+□□□□*1) 2月27日公表の改定値。*2) ロイター「米大統領選、トランプ氏が勝利 ハリス氏破り4年ぶり政権奪還(2024.11.6)」 *3) 2022年7月には49%まで上昇。1.はじめに2.低所得者層の経済状況財務省大臣官房総合政策課 海外経済調査係 鈴木 裕太【図表1】家計の保有資産額【図表2】消費者物価指数(前年比上昇率)米国の2024年の実質GDP成長率は前年比+2.8%*1と高成長を維持した。そのけん引役は底堅い個人消費である。しかし、個人消費の裏付けとなる家計の所得や資産などを示すデータには、特に低所得者層が苦境に陥っている旨が示唆されていると指摘されている。昨年11月の大統領選挙においては、経済が重要な争点として挙げられており、インフレに苦しむ低所得者層による経済への不満がトランプ氏再選に影響したとの分析がある*2。高所得者層によって昨今の個人消費拡大がけん引されて来た側面がある一方で、昨年の小売り・外食企業の決算において低所得者層の消費抑制を反映した業績が報告されていることなどを踏まえると、低所得者層による個人消費に息切れが生じつつある可能性があり、今後の経済動向を見通すうえで、低所得者層の現状を確認しておくことは重要であろう。本稿では、困窮する低所得者層の経済状況を確認するとともに、第二次トランプ政権の政策が低所得者層に及ぼす影響について考察したい。【図表1】は家計の保有資産額の推移を示している。上位1%はコロナ禍以降の株価や住宅価格の上昇の恩恵などを受けて大きく上昇している一方、下位50%の上昇は限定的となっている。富の偏在が拡大するなか、低所得者層はコロナ禍後の急激なインフレにより生活が圧迫された。【図表2】に示す消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は2021年から急激に上昇しており、なかでも食品価格は一時+10%を超えて顕著に上昇した。また住居費は、足元でも+4%を上回る水準で高止まりしている。食品価格と住居費は低所得者層の家計に占める割合が高いため、NY連銀によれば、コロナ禍後のインフレの影響を最も受けたのは低所得者層であったと分析されている。また、ミシガン大学のマインド調査においても、物価高が生活水準を低下させているとの回答比率が2021年1月の5%から2025年1月には34%まで上昇しており、依然として低所得者層を中心に負担感が大きいことが推察される*3。 70 ファイナンス 2025 Apr.Finacial times「Poorer voters flocked to Trump ̶ and other data points from the election(2024.11.9)」海外経済の潮流 155米国の困窮する低所得者
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