ファイナンス 2025年4月号 No.713
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SPOT(寝殿造りの意匠を随所に取り入れているという上野毛の閑静な住宅街にある五島美術館。photo by Shigeo Ogawa 五島美術館提供)公益財団法人 五島美術館 (gotoh-museum.or.jp)(『源氏物語の場面を取り入れた「源氏発句双六」五十四帖源氏発句双六 - 国立国会図書館デジタルコレクション)「紫式部日記」の約四分の一にあたる四巻分が五島美(創業者:岩崎彌太郎の弟)、その息子、第四代社長、術館などで収蔵。徳川美術館のWebsiteによると「人物は引目鈎鼻、建物は吹抜舞台の手法による大和絵で、静謐な画題の中に物語の世界観や登場人物の心理を見事に表現…美麗な料紙に流麗な筆致で描かれた詞書とともに原作に近い時代の雰囲気をよく伝えて」いるという。「紫式部日記絵巻」は五島美術館のWebisteによると「『紫式部日記』を、約二百五十年後の鎌倉時代・十三世紀前半に…絵巻にしたもの」。こちらも国宝で、術館などに現存。東急会長だった五島慶太翁が創立し、開館目前に亡くなったという上野毛の閑静な住宅街にある五島美術館の美術館案内によると「国宝『源氏物語絵巻』、『紫式部日記絵巻』にふさわしい寝殿造りの意匠を随所に取り入れて」いるといい、敷地約20,000m2、庭園には四季折々の花が咲き、庭の茶室も趣深い。この他、狩野永徳の「源氏物語図屏風」は宮内庁の収蔵品。俵屋宗達の「源氏物語関屋澪標図屏風」は、三菱の岩崎家が収集した美術品を収蔵する静嘉堂文庫美術館の国宝。昭和の建物として初めて重要文化財に指定された丸の内の明治生命館に2022年にオープンしたこの美術館は、三菱第2代目社長、岩崎彌之介小彌太の親子二代で蒐集した国宝7点などの美術品を収蔵。建物自体が美術品のような内装も壮観。丸の内の一等地にこんな美術館を作ってしまうのは、さすが三菱である。工芸。徳川美術館のWebsiteによると、寛永16年(1639)、三代将軍家光の娘千代姫が尾張徳川家に嫁いだ時の国宝「千代姫婚礼道具」には「初音」や「胡蝶」の帖、「宇治十帖」にちなんだものが多数あるという。「初音の調度」は「『源氏物語』『初音』帖『年月を松にひかれてふる人に今日鴬の初音きかせよ』の歌意を主な意匠としているため『初音の調度』と呼ばれ…47件、『胡蝶』帖にちなむ『胡蝶の調度』10件ほか70件が現存」。「徳川美術館の1万件余りの所蔵品の中での一層、輝きを放つ、世界に誇る不朽の名品で…計70点が一括で伝わる、江戸時代を代表する蒔絵の名品」だという。このような逸品に限らず、江戸時代になると浮世絵師が「源氏絵」を描く。「源氏絵」という、色紙形や扇面、或いは屏風に書く場面を描いたもので名場面がパターン化。源氏絵が多く描かれたのは室町時代以後で、装身具・調度品のデザインにも使われ、江戸後期になると浮世絵の世界で源氏物語に題材をとる趣向が流行したという。源氏物語の絵や詞は、遊戯具の中にも使われ、”源氏貝”(平安時代以来おこなわれてきた貝合せを基にしたもので、両片の貝の裏に源氏物語の絵やを書き歌かるたのように取り合う遊び)、”源氏かるた”、双六、羽子板にも源氏絵があしらわれたという。浮世絵では、鈴木春信は「古典の中身を現代に見立てた絵」を描き、柳亭種彦作の「偐紫田舎源氏」の画を描いた歌川国定は「新たな浮世絵、”源氏絵”を生み出した」という。 56 ファイナンス 2025 Apr.

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