ファイナンス 2025年4月号 No.713
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44444SPOT写真提供:(公財)名古屋観光コンベンションビューロー名古屋国税不服審判所 所長 江崎 純子(1)国税不服審判所とは(2)国税不服審判所の組織における多様性桜と名古屋城令和6年7月、名古屋国税不服審判所勤務を命じられた。東京の自宅から新幹線を使って片道3時間弱、普通、単身赴任の距離である。夫は家事がひととおりできるため、高校生と中学生の子を夫に任せて単身赴任をすることもかなり考えたが、「お母さんだけ名古屋に行ったきり、でいいから~」と、嬉しそうに子供達から言われると、「いや、待て」、再考せざるを得なかった。“多分、私がいないと、全く勉強しない、家のこともしない。好き放題してしまう。帰宅したら、散らかしまくった自宅の掃除で週末がなくなる。”という不安である。そうして選んだ方法が、“新幹線通勤ときどき在宅勤務”、であった。もちろん、人それぞれに事情があり、この方法がいいとか、おこがましいことを言うつもりは全くない。ただ、一昔前であれば、「単身赴任」一択しかなかった所に、働き方改革もあって違う選択もできるようになったのは悪いことではないのではないか。少々大変な面もあるけれど、楽しみもある“東京・名古屋新幹線通勤”について、勤務先である国税不服審判所のPRも兼ねて、以下、簡単にご紹介したい。国税不服審判所は、国税に関する法律に基づく処分(税務署長や国税局長などが行った更正・決定や差押えなど)についての審査請求に対する裁決を行う機関(国税通則法第78条第1項)で、国税庁の特別の機関にあたる。国税不服審判所は、税務行政部内における公正な第三者的機関として、適正かつ迅速な事件処理を通じて、納税者の正当な権利利益の救済を図るとともに、税務行政の適正な運営の確保に資することを使命とし、審査請求人と税務署長や国税局長などとの間に立つ公正な立場で審査請求事件を調査・審理して裁決を行っている。審判所での事案の審理は、基本的に書面審理が主体であるが、請求人の方との面談の際には話をよく聞き、場合によっては職権調査も行い、納得のいく裁決となるよう、組織一丸となって日々努めているところである。令和5年度の審査請求の発生件数は全国で3,917件、処理件数は2,873件である。処理件数のうち、納税者の請求が何らかの形で受け入れられた件数(認容件数)は279件(一部認容139件、全部認容140件)で、その割合は9.7%となっている*1。また、審査請求について、標準審理期間を1年と定めており、令和5年度の1年以内の処理件数割合は99.1%である。国税不服審判所には、東京(霞が関)にある本部のほか、全国に12か所の支部と7か所の支所があるが、組織の特色の一つとして、審理の公正性を担保するため、多様な人材が集まって仕事を進めているということがある。 42 ファイナンス 2025 Apr.*1) 国税不服審判所ホームページ「令和5年度における審査請求の状況」2 名古屋国税不服審判所の組織と人1 はじめに東京・名古屋新幹線通勤日記

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