ファイナンス 2025年4月号 No.713
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SPOT株価の推移満期3か月前株価転換制限条項(トリガー水準:転換価格×150%)転換制限条項(トリガー水準:転換価格×130%)転換価格発行時価格時間満期CB発行時点(注)この図における株価の推移はあくまで一例です。(出所)各種資料より筆者作成株価転換制限条項(トリガー水準:転換価格×130%)転換価格発行時価格CB発行時点株価の推移時間満期1年前満期3か月前満期転換制限条項が二段階で設けられているパターン図表3 転換制限条項(CoCo条項)のイメージ図転換制限条項が一段階で設けられているパターン3~6か月前にこの条項が解除されるという形で、段階われる図です。この図表では株価の推移が示されていますが、株価がこの図の薄いグレーの部分で推移すると株式に転換可能である一方、濃いグレーの部分を推移している場合、株価に転換できないということを意味しています(この図における株価の推移はあくまで一例です)。典型的には、この価格制限の水準(トリガー水準)については、転換価格の130%や150%などの形で設定されます。シンプルな形だと図表3の左側のような形で、例えば130%で制限条項が付されて、満期の3~6か月前にこの制限がなくなるというものです。一方、図表3の右側のように、当初150%に水準に設定され、満期1年前に130%へ下げられ、満期の的に転換条項が解除されるという形も取られます。もっとも、「基礎編」で説明したとおり、オプションにはタイム・バリューがあるので、CBの保有者は基本的に満期付近で株式転換オプションを権利行使する傾向があります。そのため、転換制限条項を付したとしても、実際には、バリュエーション(アップ率)に大きな影響を与えないとされています。先ほどソフトコール・オプションの説明をしましたが、CBに含まれるオプションには、プット・オプションもあります。CBにおけるプット・オプションは、CBの投資家が満期前に繰り上げ償還できる権利です。このオプションを具体的に考えるため、読者がCB(5年債)を持っているとしましょう。CBの発行後、株価は低下していき、読者としては該当のCBが株式に転換される可能性がなくなったと考えたとします。読者としては、もう転換される可能性がないとすれば、クーポンが生まれないCBを持っておく必要はなく、早めに投資額を返してほしいという気持ちが生まれます。CBにおけるプット・オプションとは、CBの保有者が権利行使すれば、例えば、満期前である3年後に額面で償還することができるというオプションです*17。したがって、上述のケースにおいて、仮に3年後に額面償還するプット・オプションをCBの保有者が持っていれば、CBの保有者が株価が転換価格を上回ることがないと考えたときに権利行使をし、繰り上げ償還をすることになります。図表4がプット・オプションのイメージです(この図における株価の推移はあくまで一例です)。アップ率はプラスなので、発行時の株価は転換価格を下回ります。CBを発行後、株価は低迷し、転換価格を超えることがないと思われる場合、CBの保有者は、プット・オプションを権利行使できるタイミングが来たら、このオプションを権利行使して、繰り上げ償還されるということになります。 24 ファイナンス 2025 Apr.*17) コーラブル債と呼ばれる債券もありますが、コーラブル債とは、発行体が一定の条件で元本の100円で早期償還することが可能な債券を指しています。(3)プット・オプション

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