ファイナンス 2025年4月号 No.713
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SPOT (注)この図における株価の推移はあくまで一例です。(出所)各種資料より筆者作成コール可能期間株価の推移ソフトコール水準転換価格発行時価格時間株価アップ率CB発行時点コール可能期間株価の推移ソフトコールを行使が可能な期間が開始時間ファイナンス 2025 Apr. 23ソフトコールを行使が可能な期間が開始株価ソフトコール水準転換価格アップ率発行時価格CB発行時点が違うため注意してください。この詳細は服部(2022)を参照してください。<ソフトコールの水準に株価が達しないケース>図表2 ソフトコール・オプションのイメージ<ソフトコールの水準に株価が達するケース>転換社債入門れることは、株式に転換される場合の価格の上限を付すという効果をもたらします。ソフトコール水準は、典型的には転換価格の125%あるいは130%などに設定されます。投資家からすれば、ソフトコール水準が下がるということは、CBを購入した場合、株価が上昇した場合のアップサイドがなくなるので、CBを買う魅力が落ちるので、発行体はその点を考慮してソフトコール水準を定める必要があります。なお、「基礎編」で言及したとおり、通常のCBに含まれる株式転換オプションはアメリカン・タイプのオプション(いつでも権利行使できるオプション)が用いられますが、タイム・バリューがあるため満期直前に権利行使される傾向があります。もっとも、ソフトコール・オプションを入れることにより、株価がソフトコール水準に達した時点で、満期前であっても投資家が株式に転換するという効果ももたらします。図表2がソフトコール・オプションのイメージです(この図における株価の推移はあくまで一例です)。アップ率は通常プラスなので、転換価格は、発行時の株価を上回るように設定されています。CBが発行された後、一定期間経過後、発行体が早期償還できる期間(コール可能期間)が生まれます。この期間が過ぎてから、ソフトコール水準を株価が超えた場合、発行体は元本償還することが可能になります(CBを持つ投資家はこの水準に達した場合、株式に転換することになります)。図表2の左側のように権利行使が可能な期間でソフトコール水準を株価が上回れば、権利行使が可能となるタイミングで株式に転換されます。もっとも、図表2の右側のように株価がソフトコール水準を上回らなければ権利行使されません。これは発行体にメリットがあるオプションを与えられていることを意味するため、投資家からみると、CBの価値を下げることになります。アップ率という観点でいえば、発行体が早期償還できる期間が早ければ早いほど、また、ソフトコールの水準が低いほど、アップ率は低くなります。また、株価がソフトコール水準に達したら株への転換オプションが権利行使されるという意味で、権利行使・希薄化を促します。株式への転換そのものに制限を付ける条項もあります。これを「転換制限(Contingent Conversion, CoCo)条項」といいます*16。先ほどの例に再び戻り、今の株価が100円で、転換価格が120円であるとします。前述のとおり、CBの保有者はいつでも株式に転換できるオプションを権利行使できるのですが、発行体は、CoCo条項を使えば、一定の期間、例えば転換価格の130%を超えていないと株式に転換できないという制限を付けることができます。図表3がこの転換制限条項を説明するうえでよく使*16) なお、金融機関がバーゼル規制の観点で自己資本を増やす場合の転換社債をCoCo債と呼ぶこともありますが、ここで記載しているCoCoとは性質(2)転換制限条項(CoCo条項)

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