ファイナンス 2025年4月号 No.713
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SPOT(1)ソフトコール・オプション(出所)各種資料より筆者作成図表1 CBに係るアップ率と株式への転換促進(転換抑制)の関係アップ率の上昇(3)プット・オプション転換抑制(2)転換制限条項(4)額面現金決済条項(1)ソフトコール・オプションアップ率の下落転換促進(5)ソフトマンダトリー条項オプションの価値」としましたが、実際のCBには、株式に転換するオプションに追加して、様々なオプションが含まれています。その意味で、CBの価値は、CBの価値=社債の価値 +(株式転換も含めた)オプションの価値で決まるといえます。大切なことは、CBに含まれるオプションには、CBの価値を上げるものもあれば下げるものもあり、影響しないものもあるということです*13。CBに付与されるオプションには、CBを発行する企業が権利行使できるものと、投資家が権利行使できるものがあります。プションが加わればCBの価値は上がりますし、発行体にとって都合がよいオプションが加わればCBの価値は下がります。実際のCBを評価するうえでは、内包される様々なオプションを考慮する必要があります。ここから日本企業が発行するCBに含まれているオプションについて順に説明をしていきます。CBに含まれるオプションに関して、しばしばなされる分類は、あるオプションをCBに追加した際、アップ率が上がるかどうかというものです。これに加えて、あるオプションを加えたときに、どの程度、株式への転換がすすむか(希薄化がなされるか)という観点でも整理がなされます。アップ率と希薄化という軸で、CBを整理したものが図表1です。実際に、発行体が各種オプションの導入を検討する際には、どのオプションを加えると、どのようにアップ率が増え、希薄化がどの程度進む可能性があるかを考慮します。この図表1には、CBに追加されることが多い代表的なオプションが掲載されています。以下では、それぞれのオプションについて説明していきます。ソフトコール・オプションとは、企業がCBを発行した後、株価が上がって転換価格を一定程度上回った場合、発行体が額面で該当のCBを償還することを可能とするオプションです*14。例えば、現在の株価が100円であり、転換価格が120円であるとします。発行後株価が上がっていき、例えば、発行後1年後、ある水準(転換価格の125%あるいは130%など)に株価が達した場合、その時点で、元本である100円でCBを償還するというオプションがソフトコール・オプションです。発行体が早期償還できる株価の水準を「ソフトコール水準」といいます。CBの投資家からすれば、ソフトコール水準に株価が達したら、発行体のCBは早期償還される可能性があります。このソフトコール水準は転換価格より高い水準に設定されているため、100円で償還されるより、ソフトコール水準に達した時点で株式に転換したほうが得です。したがって、ソフトコール・オプションがCBに入ることにより、CBの保有者は、株価がソフトコール水準に達したら、CBを株に転換するオプションを権利行使するインセンティブが生まれます*15。発行体からみると、ソフトコール・オプションを入CBの投資家からみれば、自分にとって都合がよいオ 22 ファイナンス 2025 Apr.するオプションを有するものですが、ソフトコール・オプションに比べ、あまり使用されることがないと理解しています。に転換する必要はありません。*13) 2006年に新会社法が施行されたことで、CBに様々なオプションを含めることが可能になりました。*14) ソフトコール・オプションの他に、ハードコール・オプションと呼ばれるオプションもあります。これは発行体がどのタイミングでも100円で償還*15) 実際のCBでは、ソフトコール水準に達したら一定期間に株式に転換する必要があるという商品性になっており、ソフトコール水準に達する前に株式3. CBに含まれる様々なオプションとCBの価値3.1 CBに含まれる様々なオプション「基礎編」では、「CBの価値=社債の価値+株式転換3.2 各種オプション

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