78 ファイナンス 2025 Mar.2022; Wright 2024)。他方で、低技能移民の受け入(Brunello et al. 2020; Costa-Fernández & Lodoto 2024)。賃金を下げることで、企業の利益が増え、そう点で留保が必要ですが、移民の受け入れは全体的には経済に正の影響になるのではないかと考えられています。OECD諸国のデータを使って、理論値等も組み込み、シミュレーションしたd'Albisら(2019)の研究を見ると、労働者が高齢化していく中で、若い移民たちが労働力を補い、社会全体の労働力率・雇用率を上げることにより、GDPや国庫収支に正の影響を与えるということがわかります。この影響は技能レベルにより異なる経路で生じていると考えられます。高技能移民の受け入れによる影響は、イノベーションの進展に起因しています。たとえば高技能移民の受け入れ増加に伴い、特許の出願率も増加するという結果が指摘されています(Wigger れの経済力に対する正の影響は、労働コストの低下による利潤の向上によって生じたという知見がありますれに伴い国が豊かになるというものです。ただし、この場合、技術投資は行われにくいことも指摘されています(Lewis 2005)。安く労働力が手に入るため、雇用者は技術投資よりも低技能移民の労働力にシフトし、技術投資への注力を行わなくなるのです。しかしながら、いずれの場合でも影響はごくわずかで、移民を受入れることで急激に経済成長することは考えにくいです。日本大学の中村教授らの研究チームが行っている日本のデータの分析では、賃金への負の効果は確認されておらず、影響する際には賃金を高めるという知見が示されています(中村ほか 2009)。同時に、低技能移民の受け入れが増加すると技術投資が行われず、その代わりに日本人が高技能へのスキルアップを目指すという傾向も指摘されています。図表2「日本の外国人労働者への依存率」を見ると、食品製造、繊維、飲食、宿泊など、特定技能移民の受け入れが認められている産業が多く、これらはもともと日本人労働者が不足している分野です。このため、現状では移民が日本人労働者と直接競合する可能性は低いと考えられます。中村教授らはまた、外国人を雇うことで、特に非熟練・熟練労働者を多く使っている、労働資本率が高い企業が事業を継続するとともに、労働集約的産業で外国人の増加にあわせて新規企業数も増加していることも示しています(中村ほか 2009)。つまり、日本でも移民を雇用してコストを削減することにより、企業が利潤をあげ、事業を継続・発展させることが可能になっていると考えられます。第3の影響は社会保障に対しての影響です。移民の受け入れが経済に正の影響を与える状況は、いずれも受け入れた移民が働くことにより生じるメリットですので、働けない状態になると、そうしたメリットは生じず、社会保障を利用することで経済的には負の影響が生じる可能性があります。また、社会保障に関しては、移民が福祉制度に依存する「福祉のマグネット」現象への懸念もあります。後者についての実証研究は、移民が福祉を目的として移動する事例は少なく、多くの場合は労働意欲を持って移住していることを示唆しています。たとえばアメリカにおける州ごとの政策方針の違い―移民に対して健康保険の利用を認めるという方向に切り替えた州と切り替えない州―が移民の移動に与える影響を検証したところ、社会保障の利用による移動は生じませんでした(Rigzin 2024)。仮に福祉利用が多い場合でも、それは移住後に職を得業業工維繊造製品料食用送輸業造製業具器業品製造属製金造械製機食械飲機店具気器電業事の他泊宿のそ造業情報製具業器ス械業サ産漁業生ビ機ー用業信通業設建技・門専,究研術学業サー農術業他の業業造売製卸スのビそ業売学採,,支業習石小,育業教鉱業砂援,業業取輸利採運郵,険保会社業物事,護業業動社便自・整福車会業・備祉動不介産貸サ・賃合品複料飲業ーば活た生スビこ関業事飼サ・連料ー業険保,業業造ス製ビ,娯金業業楽融に他(務公業道業給祉供水・業の除を産ものる能れ業不さ療類類医分分業林医ス他ガ福熱療・)そ気く電の・連載PRI Open Campus図表2:外国人労働者への依存率14%12%10%8%6%4%2%0%(出典)加藤真. 2017. 「日本における外国人に関する実態と将来像」『シノドス』を参考に、『労働力調査』『外国人雇用の届け出』をもとに講師作成
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