ファイナンス 2025年3月号 No.712
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連載セミナー 員が分かりにくいということで、アプリ化してくれました。貸借対照表を豚の貯金箱にして、損益計算書を風船に変換して、ビジュアル化して全社員に教えています。毎月売上がどんどん累計して増えているので、風船がどんどん膨らんでいくのです。風船の中には費用が入っています。こういうふうにしてくれると、全社員がいつでもアプリを見ることができて、今売上これぐらいだ、とか、今現金をこれだけ持っているのだ、とか、在庫はこれだけあるのだな、といったことがリアルタイムで確認できることになりました。イ)製品利益率モニターアプリ製品利益率モニターアプリも経理社員が作ってくれました。弊社ではメインの製品が100種類ぐらいあります。Excelファイルではその原価計算みたいなデータがあるのですが、目で追えないぐらい膨大な数です。でもこのアプリによって、製品別の費用や利益率が風船に変換されました。上に浮いている風船群は利益率が高い製品で、下の風船群は赤字になりかけている製品です。このようにして、目視で誰でも分かるようにすることによって、例えば、削り方を変えて1台の機械から1日に作れる数を増やせないか、お客様に価格転嫁して売価を変えてもらわないといけない、とか、様々なアイデアが生まれるようになりました。最近私は「ChatGPTの有料版を使いたい社員はどんどん使いなさい」と言っておりまして、みんな使いこなしています。ChatGPTは全部署で使っているのですが、やはりいいな、と思うのが納品書の処理が楽なことです。中小企業の場合、納品書はまだ紙で届いたりするのですが、納品書の写真を撮って「納品書内の文字を起こしてください」とChatGPTに頼むと、1秒もかからず、起こしてくれるのです。これをそのまま、Excelとかに持ってきたらいいので、処理がすごく便利になりました。今までは納品書を目で見ながら、入力していたため、ミスもあったりしたのですが、やはりChatGPTはすごいです。私も広報の文章作成を始めとして、本当にいろいろなことに活用しております。最後に、全社員がデジタル人材へ、ということについてご説明します。ここも同じです。「論理的」タイプと「創造的」タイプがずっと引っ張っていってくれている感じです。DXを進めて、赤字になりそうな4,000万円を削減できました。お金の削減ということも大事ですが、やはり一番のご褒美だと思ったのが、社員たちの自己肯定感がすごく高まったことです。弊社はド田舎の会社なので、人も集まらなくて、誰からも注目されることなく、作っているものも自動車部品なので、本当に地味で目立たず、モチベーションを保つことがすごく大変です。でも今は、社員たちはいろいろなアプリを作って、同僚からは「すごいね」とか、社長からは「こんなのが作れるの?」というふうに言ってもらうことで、どんどん働く喜びというか、生きる喜びというか、そういうものが芽生えていきました。DXをやることによって、働き方改革が起こりました。多くの業務が自動化され、在宅勤務や柔軟な労働時間が実現しました。女性管理職と男女比をみると、女性がどんどん活躍できるようになりました。なぜDXが進むと女性が活躍できるのか、と言いますと、弊社は製造業なのでどうしても男性が花形なのです。花形の部署は製造部もしくは営業部で、製造部は男性が主体なので、どうしても女性が活躍するのが難しかったのです。しかし、DXでアプリが作れるようになると、経理であろうが、総務であろうが、生産管理であろうが、女性でもすごいアプリを作り出すのです。「自動車部品を作れるぐらいすごいね」と言ってもらえるので、令和6年度上級管理セミナーファイナンス 2025 Mar. 73(4)ChatGPTの活用(5)全社員がデジタル人材へ(6)働き方改革が起こった

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