連載セミナー5. 第二章 うねりを継続するための 72 ファイナンス 2025 Mar.人はKPIで賞与に上乗せすることにして、従来の人事評価の中に「あなたはDXを頑張ったかどうか」みたいな項目は一切入れませんでした。人事評価の中に入れてしまうと、恐怖で社員たちを操ることになるのです。恐怖ではなくて、愛を起点というか、「みんなのためにやってくれる」「こういうアプリができたら、自分も充実するし、嬉しい」という感じで、愛を起点に経営したいなと思っているので、賞与に上乗せの方にしました。ウ)仕事はなくならない。創造する時間へ。仕事がなくなるのではないかという恐怖に関しては、時間が短縮できて余った時間は創造する時間に変換しました。製造部においてもいろいろなアプリを作ってくれて、本当に業務が効率化できました。そして、効率化できた時に、彼らが何を始めたかと言いますと、自分たちが欲しいものを、自分たちでデザインして、設計して、作ってくれるようになりました。例えば、「春夏秋冬それぞれのデザインを施した猪口」や「お箸」などを作ってくれました。今まで私たちは自動車部品製造会社として、お客様からいただいた図面をいかに正確に品質よく作るかという軸だけで働いてきました。それが、時間ができることによって、一から自分で欲しいものを考えて、自分の頭の中で想像して、それをノートに書いて、それをプログラミングして、「自分の欲しいものがこんなに作れる」となると、想像力も膨らみますし、生きている充実感が違うのです。本当にDXをやって良かったなと思うのは、こういった時間をみんなが作れるようになったことです。半分の山がやっと軌道に乗ってきましたので、ここから頑張っていただくのは、「論理的」タイプと「創造的」タイプの社員になります。ここまでのタイムラインは約2年です。ここからの山はそれを継続する力です。継続に向いているタイプは「論理的」と「創造的」の2タイプです。この「論理的」タイプがすごく重要なのですが、「論理的」タイプがずっと動いてモチベーション高くやってもらうには工夫が必要になります。まず1つ目は腹落ちするほど理解してもらうことがすごく大事になってきます。2つ目は数値戦略です。「論理的」タイプは、目的と結果が数字で表せていないと腹落ちしていきません。弊社は赤字の時にDXを始めました。その次の期も赤字の予測でした。次の期の赤字額が4,000万円だったので、だからDXをやって4,000万円の固定費を削減するぞ、という感じで数値戦略をまず伝えました。これで徐々に腹落ちしていきます。ただ、4,000万円の固定費削減をしないといけない、だけでは持続はできません。業績理解です。会社の業績を毎月教えて、今どういう状況なのかを常に伝えることによって「自分ごと化」させていきました。この業績理解はすごく大きなポイントで、会社の決算試算表を毎月全社員に教えています。この場合、数字の羅列だと、製造現場で理解できる人はほぼいないので、後でご説明しますが、ビジュアル化して全社員に教えています。会社の業績を教えながら、数字でDXの必要性を納得するということがすごく大事になってきます。「論理的」タイプが腹落ちした後のDXは本当凄まじいものがありまして、プロでもこんなの作れないのではないか、というようなことを、彼らは自分たちでYouTubeですとか、ネットで勉強しながらやっていきます。ア)業績モニターアプリそうした事例のひとつが、「論理的」タイプの女性経理社員が作った業績モニターアプリです。彼女は今までは会社の業績をExcelファイルで全社員に発信してくれていたのですが、やはりそれだと社(1)さらにDXに勢いが付く(2)「論理的」タイプにどう腹落ちしてもらうか(3)「論理的」タイプが腹落ちした後のDXDX
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