SPOT 合、前述のロジックで、株価が上がった分だけ利益が増えるため、株価が上がる分、CBの価値が上がることが示されています。オプションはコール・オプションとプット・オプションに分類されますが、CBはコール・オプションが内包されている商品です。図表3は、コール・オプションおよびプット・オプションにおける経済性(満期時)を説明する上で良く用いられる図です。コール・オプションとはあらかじめ決められた一定の株価(権利行使価格)で株式を購入する権利です*6。読者がコール・オプションを持っている場合、権利行使価格を株価が超えると上がった分だけ利益が得られ、権利行使価格より下がるとゼロというキャッシュ・フローを生み出します。したがって、図表3の左側のような価値を生みます。一方、プット・オプションとはある権利行使価格で株式を売る権利です。このオプションを持っている場合、権利行使価格を株価が下回った場合に利益が得られ、図表3の右側のような価値を生みます。これらの詳細はオプションのテキスト等に譲りますが、図表3と図表2の右を比較すると、CBにはコール・オプションの価値が社債に追加されていると理解できます。オプションには、満期時点のみ権利行使できるオプションと、いつでも権利行使できるオプションがあります。前者をヨーロピアン・オプション、後者をアメリカン・オプションといいますが、CBではいつでも権利行使できるアメリカン・オプションが用いられることが一般的です。もっとも、オプションには時間的価値(タイムバリュー)があることから、権利行使されるとしても満期である傾向があります*7。図表2におけるCBの価値について時間的価値を明示的に記載すると、図表4の通りになりますが、時間的価値についてはオプションの書籍を参照してください。図表3 コール・オプションとプット・オプションの価値(満期時)<満期時点におけるコール・オプションの価値>価値転換社債(CB)入門株価<満期時点におけるプット・オプションの価値>行使価格株価(注)ここではオプションを購入する費用を捨象しています。時間的価値本源的価値行使価格図表4 時間的価値も含めたCBの価値CBの価値100価値株価太いラインがCBの価値転換価格(100円)ファイナンス 2025 Mar. 53*6) オプションの原資産は株以外も含みますが、ここでは株を前提に説明しています。*7) もっとも、ソフト・コール・オプションなどが付されると事前に権利行使される可能性が高まるため注意が必要です。ソフト・コール・オプションについては次回の論文で説明します。
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