SPOT 特に、出生率は、その1%の増加が約19,119円の地価上昇と関係し、(1)、(2)よりも地価との関係性がより強かった。ただし、この結果の決定係数は0.31とやや低く、他にも地価と大きく関係する要素の存在が示唆された。本調査の結果から、大都市圏をはじめとする高地価の地域では、高所得者の存在が地価と密接に関係しているのに対して、低地価の地域では人口動態、とりわけ出生率が地価と強く関係している可能性が示された。このことは、大都市圏と非大都市圏とで地価形成の背景に差異がみられ、その差異は、経済力の二極化を反映しているとも言える。東京への一極集中が続いている現状が指摘されて久しい。非大都市圏から大都市圏への人口流出が続いており、これは本稿の結果が示すように、非大都市圏の低地価とも関連していると考えられる。しかし、非大都市圏においても、企業・産業が集積し、雇用機会が創出され、充実したアメニティを備えたエリアが生まれれば、子育て世帯をはじめとする人々を引きつけ、人口の維持・増加を促進し、結果として地域経済の活性化が期待できるかもしれない。本稿でご紹介した内容に加え、各地域における都市再開発、企業誘致、産業集積、インバウンド等による地価へのポジティブな影響など各財務局が調査した事例は財務省ホームページで御覧いただけます。管内経済情勢報告における特別調査(令和7年1月)の結果について地価を通してみる地域経済の動向と地域活性化の取組(特別調査)https://www.mof.go.jp/about_mof/zaimu/kannai/202404/tokubetsu.pdf※文中、意見にわたる箇所は、個人の見解であり、財務省の公式見解を示すものではありません。ファイナンス 2025 Mar. 29==財務省「全国財務局管内経済情勢報告」https://www.mof.go.jp/about_mof/zaimu/kannai/index.html(※) 財務局:全国に10の財務(支)局(北海道、東北、関東、北陸、東海、近畿、中国、四国、九州、福岡)が置かれるほか、沖縄県内は沖縄総合事務局財務部が置かれる。の変化や社会の関心が高い事柄について掘り下げています。近年では、「地域企業における賃上げ等の動向」や「地域企業における物価高・円安への対応事例」などを取り上げました。こうした特別調査を通じて、企業活動や家計に影響を与える要因を多角的に分析しています。全国の財務局が行うこうした調査は、経済の現状を客観的に把握する一つの手がかりとなるものです。「全国財務局管内経済情勢報告」は財務省のホームページで公開されていますので、関心のある方はぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。日本の経済は日々変化しており、その動向は企業経営や政策決定、私たちの生活にも大きく影響を与えます。その経済の最新状況を地域ごとに分析し、四半期に1度公表しているのが「全国財務局管内経済情勢報告」です。この報告は、全国の財務局(※)が経済指標の分析を行うとともに、企業や官公庁の皆様の貴重なご協力を頂きながら、現場の生の声を丁寧に収集し、各地域の景気動向を、個人消費、生産活動、雇用情勢などの項目別に詳しくまとめたものです。日頃よりご協力いただいている皆様には、心より感謝申し上げます。財務局は、地域に密着した視点を大切にし、経営者や地元関係者と直接対話を重ねながら、現場の実態をきめ細かく把握しています。たとえば、「建設業は人手不足の影響を受けている」「小売業は消費者の節約志向の強まりから売上が伸び悩んでいる」といった具体的な状況や変化の兆しが示されます。また、この報告には「特別調査」を設けており、経済5.まとめコラム:全国財務局管内経済情勢報告について
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