ファイナンス 2025年3月号 No.712
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SPOT 26 ファイナンス 2025 Mar.全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、三大都市圏のみならず地方圏においても、上昇基調が強まっていると言われている(国土交通省、2024)。ただし、地価の変動は地域によって差異がみられ、その差異は、人口動態、経済状況、社会的・政策的要因など、地域の様々な動向を反映していると考えられる。こうした、地域の現状を映し出す鏡とも言える地価をレンズとし、地域の変化と影響を与える要因を読み取るとともに、地域の活性化に寄与する事例を紹介すべく、令和7年1月30日に開催した全国財務局長会議・管内経済情勢報告において、地価を通してみる地域経済の動向と地域活性化の取組と題する特別調査本稿では、そのうち、「地価を通してみる地域経済の動向」について取りまとめた調査結果の一端を紹介したい。なお、本調査では、定量分析と、地理情報システムより作成したマップに基づく定性分析をミックスさせた分析手法を採用している。図1は、日本の過去30年間の地価(住宅地)を、価格帯別に色分けしてマッピングしたものであり、「都道府県地価調査」が提供する郵便番号レベルのデータを利用した。マップ上の濃い色のドットは、地価がより高いことを意味している。まず、マップの上部に記載した平均地価が示すように、1990年代から2010年代にかけて地価は下落したものの、2020年代は2010年代と比べて地価は上昇している。また、三大都市圏ではドットの色が濃く、相対的に地価の水準が高い一方、三大都市圏以外では地価が低下した地域もみられる。これらは、バブル期の地価の急上昇とその後の長期的な調整期を経て、地域間で地価の格差が生じていることを示唆している。続いて、三大都市圏の地価にフォーカスした図2をみると、三大都市圏の都市周辺部では、1990年代から2010年代にかけて地価が高いエリアが縮小している。しかしながら、2010年代から2020年代にかけて、高地価のエリアが拡大しており、都市周辺部においては土地需要が再び高まっている様子が観察された。(以下、「本調査」という。)の結果を報告した。(図1)過去30年間の地価(出所) 「都道府県地価調査」より財務省作成。地価は標準地の各年の調査価格(単位は円/m2)。 ※1994年を基準に同一調査対象地点のみをプロットしている。平均価格は各年で「0」(調査対象外)を除いた平均値である。1994年平均 110,122円/m22014年平均 67,180円/m22024年平均 81,037円/m22.地域間でみられる地価の格差とその変遷1.はじめに大臣官房総合政策課 課長補佐兼経済動向調査官 本庄 登/ 経済動向調査係長 本野 大幹管内経済情勢報告における特別調査(令和7年1月)の結果について

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