ファイナンス 2025年3月号 No.712
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容*8で合意に至った。SPOT コラム:アゼルバイジャンでの食文化 〜シルクロードの味に触れる〜が最重要議題として注目を集めていたことから、開幕前から「資金のCOP」と形容されていた。COP会期中は終始、先進国と途上国との間で意見は激しく衝突し、一時は交渉決裂も危ぶまれたが、会期を2日間延長し連日深夜まで調整した結果、最終的には以下の内==========(1) 全てのアクターに対し、全ての公的及び民間の資金源からの途上国向けの気候行動に対する資金を2035年までに年間1.3兆ドル以上に拡大するため、共に行動することを要請。(2) 先進国が率先する形で、2035年までに少なくとも年間3,000億ドルの途上国向けの気候行動のための資金目標を決定。また、国際開発金融機関(MDBs)が提供する気候関連資金(民間資金動員額も含む)は全て計上可能とすることも決定。(3) 南南協力等を通じて途上国が任意で貢献することを奨励。==========COP29開催直前の11月5日に米大統領選挙が実施されトランプ氏が次期大統領として当選した。COP29期間中は、2025年以降に米がCOP不在となる可能性があることに対する悲壮感はそれほど感じなかったが、本稿の執筆時点(2025年2月)では、トランプ新大統領が早速パリ協定からの脱退を含む米国の気候変動政策の方向転換を発表しており、2025年11月にブラジルで開催されるCOP30をはじめ、気候変動問題への対応・国際協調における先行き不透明感は間違いなく強まっていると言えるだろう。本年のCOP30がどの程度の盛り上がりを見せるか、どのような成果を出せるのか、現時点で予断できないものの、今回記したような「交渉の裏側」をイメージしながらCOPの報道に触れていただけると、より味わい深いものとなるのではないだろうか。写真5 火がモチーフであるフレイムタワー[筆者撮影]気候変動交渉の裏側ファイナンス 2025 Mar. 23(注)なおMDBsは、COP29期間中に、低・中所得国に対して提供する気候資金を、2030年までに1,850億ドル(うち650億ドルは民間資金動員額)まで拡大するとの共同声明を発表。アゼルバイジャンと聞いて、その場所がすぐに思い浮かぶ方は少ないかもしれない。同国はアジアとヨーロッパの境界付近に位置し、日本からは中東のドーハやイスタンブールなどを乗り継ぎ、約18〜19時間かかる。市街地からは、世界最大の塩湖であるカスピ海を一望できる。石油や天然ガスが豊富な資源国であり、地中から漏れたガスによって数千年にわたり炎が燃え続ける観光名所もあることから、「火の国」としても知られている。*8) https://unfccc.int/documents/643641(注)本稿のうち、意見にわたる部分は個人の見解であり、組織を代表するものではない。おわりに

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