ファイナンス 2025年3月号 No.712
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SPOT 2023年COP28ホスト国のUAEはメイン会場をエキスポ・シティ(ドバイ万博会場の跡地)としていることが、COPが如何に万博と似ているかを理解する上で最適な例であろう。なお、アゼルバイジャンがホストとなったCOP29の会場は、過去には欧州サッカーの一大イベントであるEURO2020も開催されたことがあるオリンピック・スタジアム*7であった。このように、近年のCOPは、収容力が大きい会場および大量輸送のための交通インフラの整備を必要とする、万博・五輪・サッカーW杯並みの、国を挙げての一大プロジェクトである。ボランティアも多数動員され、開催期間中は街中がCOP一色となる。なお筆者も、アゼルバイジャンの旧市街で地元テレビ局から街頭インタビューを受けバクーの印象を問われ、「美しい街並みに感動している。」と、ホスト国への謝辞を述べたものである。(オンエアされたかどうか定かではない。)COPにおける日本のジャパン・パビリオンは環境省が中心となって企画・運営され、今般のCOP29でも、日本の環境技術と気候変動への取組みを世界に発信するために様々な展示やイベントが行われた。このうち、JICAが開催したセミナーでは、渡邉和紀副財務官が「気候変動に強靭な債務条項(CRDC)」を円借款に導入するパイロット・プログラムの開始にかかるプレゼンテーションを行った。(同制度の詳細は25頁を参照されたい。)この他、近年、気候変動対策への取組みを強化している国際開発金融機関(MDBs)が合同で出展しているジョイント・パビリオンにおいて、アジア開発銀行(ADB)が、気候変動対応のための膨大な資金ギャップに対応するための革新的な資金動員メカニズムである、「アジア・太平洋革新気候変動金融ファシリティ(IF-CAP:Innovative Finance Facility for Climate in Asia and the Pacific )」のキックオフイベントを開催し、主要ドナーである日本政府を代表して渡邉副財務官がスピーチを行い、同ファシリティへの祝意と期待を表明した。このように、COPは、公的セクター、民間セクター、NGO、慈善団体(フィランソロピー)などあらゆるセクターにとって気候変動・環境分野の見本市のような場となっている。2週間の会期中の特に前半1週間は、各種交渉がまだ序盤段階ということもあって、イベント中心の要素がより強い印象である。各国首脳のスピーチも前半の1週間に組み入れられており、COP会場においては至るところで、COPの熱気や高揚感を伝えるべく、各国報道機関等のレポーター達が中継や収録を行っていた。2週間の会期中、ちょうど真ん中の日に1日だけ休息日が設けられる。もちろん最初の1週間も断続的に交渉は行われているのだが、この休息日以降は、COPの本来の目的である交渉が本格化する。例えば五輪やW杯などでは、決勝ラウンドに入れば観客数が増加し決勝戦では満員御礼というのがスタンダードかもしれないが、少なくとも筆者が参加した過去2回のCOP写真2 COP29会場建物外観(国連とCOPのロゴ)[筆者撮影]写真3 ジャパン・パビリオンの様子[環境省撮影]気候変動交渉の裏側ファイナンス 2025 Mar. 21*7) 同スタジアムは五輪誘致に向けて2015年に建設されたが、これまでアゼルバイジャンで五輪が開催されたことはない。なおバクーは、2020年五輪開会期後半〜常に予定は未定〜会期前半〜イベントとしての顔〜催地に東京とともに立候補していた。 https://www.olympics.com/ioc/2020-host-city-election

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