ファイナンス 2025年3月号 No.712
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SPOT 20 ファイナンス 2025 Mar.2024年11月11日から24日(2日間延長)にかけて、アゼルバイジャン・バクーにおいて、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が開催され、世界中から総勢6.6万人が来場した*1。開催期間中は各種報道が大きく取り上げたことから、COPという言葉を耳にしたことがある読者は多いのではないだろうか。しかしながら、報道されるのはCOPのごく一部であり、本稿では、あまり報道されることのないまず、COPというのはConference of the Partiesけで気候変動交渉そのものを指すわけではない。議」のことであるが、後者の部分のみを指しては「生物多様性条約」の第16回締約国会議であるCOP16がコロンビア*2で、「砂漠化対処条約」の第15回締約国会議であるCOP15がサウジアラビア*3でそれぞれ開催された。わざわざ条約名に言及せずとも、COPの後に続く数字を聞くだけで何の条約の締約国会議か認識できるようになれば、環境・気候変動の世界の立派な一員である。(筆者はそこにたどり着くまでに1年半を要した。)COPはその名の通り、条約締約国が一堂に会する場であり、直近の条約の履行状況等の検証・フォローアップや、将来に向けた課題の議論など、各国政府から関係者が集まって2週間という長期間にわたって交渉を行う。数あるCOPの中でも、気候変動枠組条約COPの知名度が突出しており、その理由はいくつか考えられるが、毎年開催されること(他のCOPは数年毎の開催)、節目ごとに、「京都議定書」や「パリ協定」といったインパクトのある成果物を発出してきていること、特に近年は各国首脳級が参加していること、環境運動家のグレタ・トゥンベリ氏などの著名人の参加*4や毎年の「化石賞」*5の発表など関心・注目を集めやすい場面があること、などが挙げられる。上述した6.6万人という来場者の大半は、交渉そのものには参加しない。交渉と並ぶCOPのもう一つの顔は、各国政府、企業、国際機関等がパビリオンを出展し、様々なイベント・セミナーを開催することであり、その雰囲気はまさに万博さながらである*6。実際、COPの裏側を紹介することとしたい。((条約)締約国会議)の略語であり、このフレーズだCOP29は「気候変動枠組条約」の「第29回締約国会COP29と呼んでいるのである。この他に、2024年に写真1 COP29会場内のモニュメント[筆者撮影]ただの国際会議ではない?はじめにCOPとは?国際局開発政策課課長補佐 糸魚川 卓郎/係長 谷津 佑典*1) https://unfccc.int/documents/643064*2) https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/pagew_000001_01063.html*3) https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/ge/page24_002022.html*4) BBC『「私たちを裏切った」、気候変動の危機訴える少女 国連で怒りの演説』https://www.bbc.com/japanese/49806155*5) 国際環境NGOが、交渉の進展やパリ協定の実施を妨げていると判断する国に与える賞。 *6) アゼルバイジャン・バクーは、2025年万博開催地に立候補し、最後まで大阪と争った。 https://climatenetwork.org/resource_type/fossil-of-the-day/ https://www.can-japan.org/https://www.mofa.go.jp/mofaj/ecm/ec/page4_004533.html気候変動交渉の裏側~国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)に参加して(於アゼルバイジャン・バクー)~

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