ファイナンス 2025年2月号 No.711
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連載PRI Open Campus9.通過頻度指標PTF図表9:日本(自然災害多発国)2020年図表10:中国(地政学的リスク国)2020年通過頻度(PTF指数)通過頻度(PTF指数)ランキングランキング最終製品生産者最終製品生産者0.690.640.550.450.390.390.390.380.370.360.330.320.320.310.300.300.290.280.280.270.690.640.550.450.390.390.390.380.370.360.330.320.320.310.300.300.290.280.280.27USA_41T43USA_41T4311USA_292USA_292VNM_41T43VNM_41T4333USA_41T43USA_41T4344USA_41T43USA_41T4355USA_41T43USA_41T4366USA_86T887USA_86T887USA_298USA_2989USA_86T88USA_86T88910USA_45T4710USA_45T4711USA_8411USA_8412USA_45T4712USA_45T47THA_2613THA_261314USA_8414USA_8415USA_2915USA_2916MEX_2616MEX_2617USA_41T4317USA_41T43KOR_29KOR_29181819USA_8419USA_8420MEX_2620MEX_26付加価値貿易額(百万USドル)付加価値貿易額(百万USドル)通過頻度(PTF指数)通過頻度(PTF指数)517.04442.38301.39470.55526.79444.96458.96515.82419.44392.28854.79444.05327.06779.50661.87659.21310.19338.31385.06329.92517.04442.38301.39470.55526.79444.96458.96515.82419.44392.28854.79444.05327.06779.50661.87659.21310.19338.31385.06329.923.822.522.071.941.931.581.521.501.491.441.431.421.411.411.301.301.101.101.091.003.822.522.071.941.931.581.521.501.491.441.431.421.411.411.301.301.101.101.091.00ランキングランキング最終製品生産者最終製品生産者付加価値源泉USA_29USA_2911CHN_262CHN_262CHN_29CHN_2933CHN_41T43CHN_41T4344CHN_45T47CHN_45T4755CHN_41T43CHN_41T4366CHN_287CHN_287CHN_268CHN_2689CHN_27CHN_27910CHN_2610CHN_2611CHN_2611CHN_2612CHN_2912CHN_2913USA_41T4313USA_41T4314CHN_2914CHN_2915CHN_2615CHN_2616CHN_41T4316CHN_41T43TWN_26TWN_26171718CHN_2618CHN_2619CHN_2919CHN_2920CHN_01T0220CHN_01T02AUS_07T08AUS_07T08AUS_05T06AUS_05T06AUS_05T06AUS_05T06CAN_07T08CAN_07T08AUS_05T06AUS_05T06USA_07T08USA_07T08AUS_05T06AUS_05T06RUS_24RUS_24AUS_05T06AUS_05T06SAU_05T06SAU_05T06USA_62T63USA_62T63SAU_05T06SAU_05T06AUS_07T08AUS_07T08USA_77T82USA_77T82CHL_07T08CHL_07T08RUS_07T08RUS_07T08SAU_05T06SAU_05T06USA_77T82USA_77T82USA_64T66USA_64T66AUS_05T06AUS_05T06付加価値源泉付加価値貿易額(百万USドル)付加価値貿易額(百万USドル)442.38649.10539.37896.65345.33529.44854.67305.97418.45931.26326.95741.57517.04318.16381.58693.08333.43549.40418.63374.05442.38649.10539.37896.65345.33529.44854.67305.97418.45931.26326.95741.57517.04318.16381.58693.08333.43549.40418.63374.05付加価値源泉付加価値源泉AUS_07T08AUS_07T08AUS_07T08AUS_07T08AUS_07T08AUS_07T08TWN_26TWN_26KOR_26KOR_26RUS_05T06RUS_05T06KOR_26KOR_26TWN_26TWN_26TWN_26TWN_26TWN_26TWN_26KOR_26KOR_26KOR_26KOR_26KOR_26KOR_26TWN_26TWN_26KOR_26KOR_26TWN_26TWN_26CHL_07T08CHL_07T08AUS_07T08AUS_07T08JPN_26JPN_26JPN_26JPN_26頻度ベースの地理的集中度指標PTF(Pass-through ハイリスク国の特定部門が登場する回数をすべての経路について加重平均したものと定義されます。言い換えれば、ハイリスク国に対する当該サプライチェーンの「通過頻度」を示しています。この「頻度によるサプライチェーン集中度」という考え方は、現在の貿易管理の問題に対して非常に重要な示唆を与えています。例えば、米国の輸出管理ルールの域外適用について考えてみましょう。これは、米国系企業であるなしに関わらず、米国国外で操業する事業所が「安全保障上の懸念国」の企業と取引を行おうとする場合、米国の政府当局(商務省)から輸出許可を受けることを義務付けるものです。一般的にこの申請は、取引額の多寡にかかわらず、都度、行う必要があります。したがって、サプライチェーンを国際展開する多国籍企業にとっては、安全保障上の懸念国企業との取引頻度が重要です。審査にかかる時間や事務手続きコストの問題もさながら、もし許可が下りなかった場合、生産計画全体を見直す必要が生じます。米国の貿易管理ルールの域外適用というのは、サプライチェーンの随所に米国産の地雷が埋め込まれているようなものですが、通過頻度指標を用いれば、こういった問題を構造的に捉えることができます。特に、Frequency)は、あるサプライチェーンの経路上に、ICT関連機器のように、複雑な国際分業体系を持つ産業の分析には非常に有用です。では、これら二つの指標を用いた分析結果をご紹介します。図表9及び図表10では、自然災害が多い日本と、米中対立により地政学的リスクが高まる中国をハイリスク国としました。国際産業連関表が対象とする約1200万本のサプライチェーンのうち、通過頻度PTFの上位20と、それぞれに対応する付加価値貿易額を並べております。なお、ここで分析するのは、クロスボーダーのサプライチェーン、すなわち付加価値源泉国と仕向け国が異なるもののみを対象としています。例えば、図表9(ハイリスク国:日本)の最上段は、米国29部門(自動車)がオーストラリア07T08部門(非エネルギー関連採掘業)を源泉とする4億4200万ドル分の付加価値を用いており、またそのために平均値の0.69倍の頻度で日本の産業と関わっているということを表しています。ここで、図表10(ハイリスク国:中国)のなか、米国84部門(公務/国防/公安)が、韓国、台湾、日本の26部門(コンピューター/電子・光学機器)を付加価値源泉とするサプライチェーンの中で、中国が非常に高いプレゼンスを示しているという事実は注目に値すると思います。ファーウェイの事例にもあるように、有志国を巻き込んでICT産業のサプライ10.指標を用いた分析結果 76 ファイナンス 2025 Feb.出典:猪俣哲史『グローバル・バリューチェーンの地政学』、2023年

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