連載セミナー 令和6年度上級管理セミナーく、対処のしようがあったという、仕事内容そのものの男女差が背景になっている可能性があります。しかし、原因はおそらくそれだけではなくて、管理職のほとんどが男性であることによって、部下の性別によって対応に差が生じているのです。男性上司は、同じことを男性部下と女性部下から希望されたときに、意図的ではないにしても、もしかしたら女性の希望を叶えてあげたいと思うかもしれません。逆に男性部下からの要望に対しては、同性同士だからこそ、「俺は頑張ってやってきたのだから、お前もそれぐらい我慢しろ」という忍耐の再生産みたいなことをやりがちです。上司側に性別によって部下を差別する意図はなく、公平に接しているつもりでも、無意識で対応に差異が生じることはあります。是非、性別によらず、一人一人の部下に向き合えるよう留意いただければと思います。ここまで、「生き生き働く」ということを中心に、管理職の皆さんに参考になりそうなことをお話しさせていただきました。財務省の各組織は社会的に重要な役割を担っていて、職員の皆さんもここで長く頑張りたいと思ってらっしゃると思います。しかし、そうであっても環境変化により、一般に離職可能性が高くなっており、今いる職員に今まで以上に活躍してもらうことが何より大事になっています。今まで以上に活躍してもらう、長く頑張ってもらうために大切なのは、職員が本音で望んでいることは人それぞれで、しかも、ライフステージやキャリアステージによってその優先度が変わってくことを上司が理解していることです。上司は真摯に向き合っているつもりでも、部下が本音を話さない、一番大事なことこそ言いにくいということはあります。そのため、本音を知ることはなかなか難しいという前提に立って、部下とコミュニケーションを取るようになさってください。その際、心理的安全性の確保が決定的に重要です。上司に本音を話しても不利益を被らない、この人は自分の味方である、と思われているかどうかがコミュニケーションの質を大きく左右します。他方で、自分で認識している以上に「無意識のバイアス」が存在します。年齢や性別、見た目などで、差が生じないよう留意が必要です。環境変化により人材が一層大切になっています。管理職の皆さんが「一人一人のメンバーを尊重する」ということを、今一度大切にしていただけると、より良い職場になると思います。ご清聴どうもありがとうございました。中村 天江(なかむら あきえ)公益財団法人 連合総合生活開発研究所 主幹研究員以上東京大学大学院数理科学研究科修了後、1999年リクルート入社、2009年リクルートワークス研究所に異動、2016年一橋大学にて博士号(商学)取得。2021年連合総研に転職。「働くの未来」をテーマに調査研究・提言を行う。リクルートワークス研究所にて、2015年「2025年 働くを再発明する時代がやってくる」、2016年「WorkModel 2030 テクノロジーが「働く」を変革する」、2020年「マルチリレーション社会」を発表。連合総研にて、2024年「労働組合の「未来」を創る―理解・共感・参加を広げる16のアプローチ―」をとりまとめる。内部労働市場と外部労働市場を横断する労使関係論の構築を目指している。講師略歴まとめ 長く活躍してもらうためにファイナンス 2025 Feb. 69
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